幹細胞移植に伴う腎合併症

内科学 第10版 の解説

幹細胞移植に伴う腎合併症(悪性腫瘍と腎障害)

(3)幹細胞移植幹細胞移植に伴う腎合併症(renal complications of hematopoietic stem cell transplantation)
 近年,特に白血病悪性リンパ腫など造血器腫瘍に対して造血幹細胞移植が行われる機会が増えているが,造血幹細胞移植の1%程度のまれな合併症としてネフローゼ症候群が知られている.腎組織像は膜性腎症を呈することが最も多く造血幹細胞移植に伴うネフローゼ症候群の75%は膜性腎症とされている.また,25%に微小変化型ネフローゼ症候群が起こるとされているが白血病や悪性リンパ腫そのものでも微小変化型ネフローゼ症候群がみられるので原疾患との鑑別が必要である.造血幹細胞移植により膜性腎症が起こる機序については明らかではないが,移植片対宿主病graft versus host diseaseGVHD)の際に現れることが多いためGVHDの腎症状としてとらえることも可能である.治療については一定の見解はなく,特発性の膜性腎症や微小変化型ネフローゼ症候群の治療が行われることが多い.[山辺英彰]
■文献
Cohen EP ed: Cancer and the Kidney. Oxford University Press, 2011.Glassock RJ: Other glomerular disorders and antiphospholipid syndrome. In: Comprehensive Clinical Nephrology (Floege J, Johnson RJ, et al ed), pp335-343, Elsevier, St.Louis, 2010.
新田孝作:腎障害をきたす全身性疾患―最近の進歩 悪性腫瘍と腎障害.日内会誌,100: 1330-1335, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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