デジタル大辞泉 「移植片対宿主病」の意味・読み・例文・類語 いしょくへんたいしゅくしゅ‐びょう〔‐ビヤウ〕【移植片対宿主病】 ⇒ジー‐ブイ‐エッチ‐ディー(GVHD) 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
家庭医学館 「移植片対宿主病」の解説 いしょくへんたいしゅくしゅびょうじーぶいえっちでぃー【移植片対宿主病(GVHD) Graft-Versus-Host Disease】 [どんな病気か] 血液の病気では、治療として、輸血(血液製剤を含む)や骨髄移植(こつずいいしょく)(「骨髄移植の知識」)が、よく行なわれるようになりました。 しかし、他人の血液や骨髄(移植片(いしょくへん))には、自己と非自己を見分け、非自己を排除しようとする免疫機能(めんえききのう)のはたらきに主要な役割をはたすリンパ球が含まれています。 輸血や骨髄移植は、白血球(はっけっきゅう)などがうまく機能しない病気をもつ患者さんに対して行なわれることが多く、その患者さん(宿主(しゅくしゅ))は免疫力が低下しているので、適合性のある移植片は生き続けます。 もし、宿主の免疫力が強く、移植片の適合性がなければ、移植片は異物として攻撃され、死んでしまうので、ある意味では問題ありません。 しかし、移植片のリンパ球が生き続けると、このリンパ球は移植を受けた患者さんを非自己とみて、排除しようとします。 こうして、宿主の血液に入った移植片のリンパ球が増殖し、全身にまわると、宿主の組織は主要組織適合抗原(こうげん)という目印がついているので、抗体(こうたい)などでこれを攻撃するようになり、いろいろな症状がおこってきます。 これが移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれるものです。 [症状] 輸血や骨髄移植後しばらくすると、皮膚の表面全体に赤い斑点(はんてん)が現われ、高熱が出てきます。その後、下痢(げり)や肝臓障害がおこり、あらゆる血球が減少するため、貧血によって衰弱するだけでなく、感染症や出血がおこりやすくなります。 こうして約1か月後には、多くの臓器が傷害され、死にいたります。 [治療] 発病した患者さんの多くが死亡しますが、いまのところ有効な治療法はありません。したがって、なによりも予防が重要です。 輸血する血液のリンパ球を死滅させるか、取り除くのが一番です。そのためのもっともよい方法として、血液に放射線を照射することが行なわれています。また、フィルターでリンパ球を取り除く方法もあります。 骨髄移植では、自分の骨髄を取り出し病気の造血細胞だけ除いて体内にもどす、他人の骨髄からGVHDをおこすリンパ球を除いて注入する、成熟したリンパ球を含まないへその緒(お)の血液を注入するなどの方法が行なわれます。 出典 小学館家庭医学館について 情報
内科学 第10版 「移植片対宿主病」の解説 移植片対宿主病(免疫系疾患) (2)移植片対宿主病(graft-versus-host-disease:GVHD) GVHDは同種造血幹細胞移植後に起こりうる重要な合併症である.急性GVHDと慢性GVHDとがあり,特に消化管病変は急性GVHDで頻度が高く予後を左右することもあり重要である.症状は悪心・嘔吐,食欲不振,下痢,下血,腹痛などが認められる.急性GVHDのおもな標的臓器は皮膚,肝臓,消化管で,消化管症状に加えて皮疹や肝障害を伴うことがある.上部消化管内視鏡検査では発赤,びらん,潰瘍,浮腫,粘膜脱落など認めるがいずれも非特異的所見である.下部消化管内視鏡検査でも,発赤,びらん,潰瘍,浮腫,粘膜脱落など非特異的所見が主体であるが,斑状発赤,粘膜脱落,顆粒状粘膜変化が特徴的であるとの報告もある.消化管GVHDは水様性下痢が主症状のことが多く,一般的に上部より下部消化管内視鏡検査が優先されて施行されることが多い.確定診断は消化管粘膜生検による病理組織学的診断による.鑑別疾患としてはサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染や血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy:TMA)が重要となることが多い.いずれの疾患もときに致死的となり早期診断を要する.[安藤貴文・後藤秀実] 出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報