幾久(読み)いくひささ

精選版 日本国語大辞典 「幾久」の意味・読み・例文・類語

いく‐ひささ【幾久】

〘名〙 (「いくびささ」とも) 久しい間。長い間。
万葉(8C後)四・六六六「相見ぬは幾久(いくひささ)にもあらなくにここだく吾は恋ひつつもあるか」
※新訳華厳経音義私記(794)「久如当成 伊久比左々(イクヒササ)ありてか仏と成るべきと問へる状のみ」
※観智院本名義抄(1241)「久如 イクビササ」
[語誌](1)「ひささ」は形容詞「ひさし」の語幹「ひさ」を繰り返して「ひさひさ」とし、「ひ」を省略し「ひささ」となったものという。
(2)「万葉集」の「幾久」をイクヒササと訓むことについては他に異訓が多いが、「いくひささ」という語形が奈良朝末期から平安朝初期にかけて存在したことは訓点資料により確認されているので、「幾久」をイクヒササと訓む根拠は十分ある。

いく‐ひさし・い【幾久】

〘形口〙 いくひさし 〘形シク〙 いつまでも久しい。行く末長い。近代では、結婚目見えなどの時の挨拶の中で、連用形を副詞的に使うことが多い。文語でも、将来時間経過にいうことが多いが、遠く隔たった昔の意に用いることもある。
※玉塵抄(1563)一八「母に酒をすすめていわうていくひさしう寿命ながうをりあれといわいごとをしたぞ」
浮世草子世間娘容気(1717)三「娌(よめ)をとるも子孫相続のためなれば、相応よりかろくして幾久敷(イクヒサシク)家をつたゆるこそ人たる者の本意なれ」
いくひさし‐さ
〘名〙

いく‐ひさ【幾久】

〘名〙 いかほどの久しさ、いくらもの久しさの意で、いつまでも永遠に栄えよという祝福の意に用いる。
書紀(720)崇神八年四月・歌謡「この御酒(みき)は わが御酒ならず 日本(やまと)なす 大物主(おほものぬし)の 醸(か)みし御酒 伊句臂佐(イクヒサ)伊句臂佐(イクヒサ)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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