日本大百科全書(ニッポニカ) 「広塩性」の意味・わかりやすい解説
広塩性
こうえんせい
生物が塩分濃度変化の広い範囲に生存できる性質をいう。その反対の性質を狭塩性とよぶ。河口域のように淡水と海水が混じるところでは、雨期、乾期といった季節により、また1日のうちでも潮の干満によっても塩分濃度変化が著しく、そのため、そこにすむ生物の多くは広塩性である。広塩性生物では、狭塩性生物に比べて、外界水の塩分濃度変化に抗して体液の浸透圧を一定に保つか、または、体液の浸透圧は外界水に伴って変化しても体細胞自身がこの変化に耐えうる機能が発達している。この耐性の程度は種ごとに異なり、河口域では淡水の影響が大きい上流域に分布するものほど一般によく発達している。広塩性の程度はまた外界水の温度条件によっても変化し、その例として、同じ種でも低緯度地域ほど低塩分条件のところまで生息することが知られている。広塩性生物の例として、魚類では、マハゼ、ウグイ、スズキ、ウナギ、クロダイ、そのほかの動物では、ゴカイ、マガキ、モクズガニなどがあげられる。
[和田恵次]