日本大百科全書(ニッポニカ) 「廓ことば」の意味・わかりやすい解説
廓ことば(さとことば)
さとことば
江戸時代に、遊里、遊廓(ゆうかく)で、遊女などの使った特色のあることば。廓(くるわ)ことば、廓訛(さとなま)りともいう。とくに江戸・吉原遊廓のことばをさす場合もある。廓には各地から女性たちが集まってくるので、そのことばは一定しない。そこで、ことばを改めさせ、もとからいた遊女たちと変わらぬようにするため、廓ことばが考え出されたといわれている。宝暦(ほうれき)・明和(めいわ)年間(1751~72)にほぼ完成をみ、天保(てんぽう)年間(1830~44)以降は衰退していき、明治期には使用されなくなった。ことばとしては、たとえば「ありんす」「ざんす」「なんす」などのように共通のものと、店によって異なるものとがあった。例としては、「ようざんす」(ようございます)、「なんざんすか」(なんでございますか)、「ようす」(ようございます)、「きいした」(きた)、「しのびをこめる」(ひそかに)、「じれったふす」(じれっとうございます)などがある。
[芳井敬郎]