日本大百科全書(ニッポニカ) 「建築循環」の意味・わかりやすい解説
建築循環
けんちくじゅんかん
building cycles
アメリカの経済学者A・H・ハンセンやS・クズネッツによって指摘された17~20年を周期とする建築景気の波。この波は、アパートや賃貸住宅に住む人口が多い国にみられる。人口に比べて住宅・建築物が不足すると、部屋代・家賃が高くなり、建築が盛んとなる。需給のバランスが回復すると家賃は安定し、建築も一段落する。やがて建物が老朽化・陳腐化してくると、人口の増加につれて建物に対する需要が増し、部屋代・家賃が上がり、新しい建築が盛んとなる。このような建設投資が景気循環に重要な働きをすることが、とくにアメリカにおいて認められていた。しかし、最近はアメリカの中産階級以上が自家を購入する傾向が強くなったこと(これは税制と密接な関係がある)、オイル・ショック(1973)以後長期不況が続いていることなどから、この波が生きているかどうか疑問視する向きもある。
[一杉哲也]