引入(読み)ひきいる

精選版 日本国語大辞典 「引入」の意味・読み・例文・類語

ひき‐い・る【引入】

[1] 〘自ラ四〙
① 引っこむ。引き退く。ひきさがる。
※枕(10C終)一八四「いま少し奥にひきいりて、さすがにゆかしきなめり」
② 引きこもる。隠れ忍ぶ。隠遁する。
源氏(1001‐14頃)夕霧「物のあはれをりをかしきことをも、見知らぬさまにひきいり」
③ 心の中に押し込める。つつみ思う。また、遠慮がちにする。
※枕(10C終)八四「いと有心に、引きいりたるおぼえはたなければ」
④ 息が絶える。絶息する。
※文明本愚管抄(1220)四「まさしき最後にてひきいらせ給にけるとぞ」
⑤ 車などをひいて、中にはいる。
蜻蛉(974頃)中「大津のいとものむつかしき屋どもの中にひきいりにけり」
[2] 〘他ラ下二〙 ⇒ひきいれる(引入)

ひき‐い・れる【引入】

〘他ラ下一〙 ひきい・る 〘他ラ下二〙
① 引いて内へ入れる。引っぱり込む。ひきこむ。
書紀(720)神武即位前(熱田本訓)「執へ令めて皇(み)舟を牽納(ヒキイレ)て以て海導者(みちひきひと)と為」
② (髻(もとどり)を冠の中へ入れる意) かぶり物などをかぶる。ひきかぶる。
※栄花(1028‐92頃)初花「御烏帽子ひきいれて臥し給へり」
③ 誘って仲間に入れる。仲間にさそい入れる。誘ったり導いたりして中に入れる。ひきこむ。
※虎寛本狂言・悪坊(室町末‐近世初)「仏道へ引入んが為、定て釈加か達磨の変化させられて」

ひき‐いれ【引入】

〘名〙
① ひき入れること。
元服の時、冠をかぶらせること。また、その役。烏帽子親
※蜻蛉(974頃)中「ひきいれに源氏の大納言、物し給へり」
③ 案内すること。手引
※米沢本沙石集(1283)一〇本「瞋恚(しんい)の引入は忍辱将軍を以て打なん」
④ いくつも入子(いれこ)にした細工物。ろくろで木を挽いて作る。合子(ごうし)、皿の類。ひきれ。
※百四十五箇条問答(1201頃)「斎の生飯(さば)をば、〈略〉わがひきいれのさらにとり候べきか」

ひき・る【引入】

〘他ラ下二〙 (下二段動詞「ひきいる(引入)」の変化した語) =ひきいれる(引入)
※書紀(720)皇極三年六月・歌謡小林に我を比岐例(ヒキレ)て姧(せ)し人の面も知らず家も知らずも」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の引入の言及

【元服】より

… 天皇元服の場合は加冠,理髪,能冠の三役がある。中でも加冠は最も重要で,冠者(かざ)(元服する者)の髪を冠の中に引き入れるところから〈引入(ひきいれ)〉ともいう。太政大臣が当たり,太政大臣がいないときにはとくに任命される。…

※「引入」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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