日本大百科全書(ニッポニカ) 「弥三郎節」の意味・わかりやすい解説
弥三郎節
やしゃぶろうぶし
青森県つがる市森田(もりた)町あたりで歌い出された民謡。江戸中期の1808年(文化5)森田村相野(あいの)に住む農家の伊藤弥三郎という男が、隣村水元村に住む万九郎の娘を嫁にもらった。弥三郎の親は冷酷で、嫁を牛馬以上にこき使いいじめ抜いたが、弥三郎も見て見ぬふりをした。ついに嫁は泣く泣く暇をとった。この事件を数え唄(うた)にしたもので、もとは12番まであったという。この唄は、嫁が弥三郎の家を出るときの嫁自身の呪(のろ)いのことばだとも、あるいは、嫁に同情した土地の人が、弥三郎に社会的制裁を加えるためにつくったものだとも、または、村々を回る読売りとよばれる瓦版(かわらばん)売りが、歌の文句を売りながら歌ったものだともいわれている。哀愁のこもった民謡で、1951年(昭和26)秋、東京で披露されてから全国的に広まった。
[斎藤 明]