影のない女(読み)かげのないおんな(その他表記)Die Frau ohne Schatten

日本大百科全書(ニッポニカ) 「影のない女」の意味・わかりやすい解説

影のない女
かげのないおんな
Die Frau ohne Schatten

オーストリアの詩人ホフマンスタールのメルヘン的長編小説。1919年刊。主人公は精霊界の王の娘で、人間界に降りて皇帝と結婚するが、影をもつことができない。影とは人間のもつ暗い運命の寓意(ぐうい)。影をもたぬ呪(のろ)いで夫の皇帝が石に化するのを嘆き、彼女は貧しい染物屋の女房から影をもらい受けようと図る。しかし彼女は他人を犠牲にしてまで、影の入手を望まない。その精神の尊さゆえに奇跡が起こり、皇帝は化石からよみがえり彼女も影を得て人間になる。愛と自己犠牲による救済の可能性を暗示する小説。作者自身の台本によるリヒャルト・シュトラウス作曲の同名の三幕オペラも、1919年に初演された。

[松本道介]

『高橋英夫訳『影のない女』(『ホーフマンスタール選集2』1972・河出書房新社)』

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デジタル大辞泉プラス 「影のない女」の解説

影のない女

ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウスのドイツ語による全3幕のオペラ(1919)。原題《Die Frau ohne Schatten》。台本はオーストリアの劇作家・詩人ホフマンスタールによる同名の長編小説に基づく。

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世界大百科事典(旧版)内の影のない女の言及

【シュトラウス】より

…また芸術院会員,ベルリン音楽大学作曲科主任教授ともなる。作曲家としては,20世紀に入ってから交響詩をやめて本格的にオペラを手がけるようになり,《サロメ》(1905),《エレクトラ》(1908),《ばらの騎士》(1910),《ナクソス島のアリアドネ》(1912),《影のない女》(1917)などを次々に発表,オペラ作曲家としての地位を不動のものとした。また《家庭交響曲》(1903)と《アルプス交響曲》(1915)とによって管弦楽曲に新境地を開いた。…

※「影のない女」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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