徒言・徒事(読み)あだごと

精選版 日本国語大辞典 「徒言・徒事」の意味・読み・例文・類語

あだ‐ごと【徒言・徒事】

〘名〙 (「あだこと」とも)
[一] うその言葉。まごころのない言葉。
※新撰字鏡(898‐901頃)「 伊豆波利己止。又阿太己止」
※右京大夫集(13C前)「あだことにただいふ人の物がたりそれだに心まどひぬるかな」
[二]
① はかないこと。ちょっとした、つまらないこと。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「たはぶれにても、人の御あだことなど、きこえ給ふべくなんあらぬ」
② 色ごと。浮気。情事
源氏(1001‐14頃)絵合「世の常のあだ事のひきつくろひ飾れるにおされて、業平が名をや腐(くた)すべき」
③ むだなこと。役に立たないこと。
洒落本・淫女皮肉論(1778)吉原の千疋犬「みつあやが謀(はかりこと)は、あだ事となりにけり」
[語誌]「徒言」と表記されていれば、(一)と考えられるが、現実には仮名表記が多く、「徒事」つまり、(二)との区別がつきにくい。「日葡辞書」でも同一語に(一)および(二)①の意味を記している。なお、「日葡辞書」では、アダコトと、コトは清音であるから、アダゴトとなるのは近世以降と考えられる。

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