徒事(読み)アダゴト

デジタル大辞泉 「徒事」の意味・読み・例文・類語

あだ‐ごと【徒事】

真心のこもらないその場かぎりのこと。たわむれごと。
「はかなき―をも、まことの大事をも」〈帚木
無意味なこと。むだなこと。
「さればとて勧むる薬剤くすりに、功能なくは―なり」〈読・弓張月・続〉

いたずら‐ごと〔いたづら‐〕【徒事】

無意味なこと。くだらないこと。
「―のみ思ひ続けられて」〈有明の別・二〉
みだらなこと。
「恋の部とて五巻まで多かるは、―のつつしみなきなり」〈読・春雨海賊
根拠のないこと。
「男は胸に知恵なくして心に知恵深しと云ふは、―なり」〈仮・夫婦宗論〉

ただ‐ごと【徒事/×只事/唯事】

《古くは「ただこと」》取り立てていうほどのこともない事柄。普通のこと。多く、あとに打消しの語を伴って用いる。「あの騒ぎは―ではない」

と‐じ【徒事】

むだなこと。むだごと。

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精選版 日本国語大辞典 「徒事」の意味・読み・例文・類語

いたずら‐ごといたづら‥【徒事】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 何の役にも立たないこと。無益、無用な行為。くだらないこと。むだごと。
    1. [初出の実例]「いたづらごとのみ思ひ続けられて」(出典:有明の別(12C後)二)
  3. 根拠のないこと。正しくないこと。いつわり。うそ
    1. [初出の実例]「男は胸に知恵無くして心に知恵深しと云ふはいたづら事也」(出典:仮名草子・夫婦宗論物語(1644‐46頃))
  4. みだらなこと。また、色恋沙汰。
    1. [初出の実例]「当世の歌舞妓狂言いたづら事を第一にたてて」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)二)
  5. 十分ではないこと。いいかげんな状態。
    1. [初出の実例]「行くも帰るも徒事(イタヅラゴト)では通れない」(出典虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一三)

ただ‐ごと【徒事・只事】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「ただこと」 ) ふつうのこと。世のつねのこと。あたりまえのこと。多く、下に否定の語を伴って、異常であることを強調していう場合に用いる。
    1. [初出の実例]「此ころとなりては、ただ事にも侍らざめり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 「Tadacotodeua(タダコトデワ) ナイ」(出典:日葡辞書(1603‐04))

と‐じ【徒事】

  1. 〘 名詞 〙 目的意図を果たさないで終わるむだなこと。効果のないこと。かいのないこと。いたずらごと。
    1. [初出の実例]「事成って自国へ帰ることが出来れば、『ブルガリアの商人』としての彼の仕事は、素(もと)より徒事(トジ)には終らぬ」(出典:雑嚢(1914)〈桜井忠温〉二二)

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