心室中隔欠損(読み)しんしつちゅうかくけっそん

六訂版 家庭医学大全科 「心室中隔欠損」の解説

心室中隔欠損
しんしつちゅうかくけっそん
Ventricular septal defect
(子どもの病気)

どんな病気か

 心室中隔欠損は、左右心室の間にある心室中隔に欠損(こう)が認められる病気です(図3)。

 血液一部分左心室から欠損孔を通り、右心室を通って肺に流れます。したがって、欠損孔を通る血液の分が肺に多く流れ、心臓に負担をかけます。この余分な血液が多いほど早く症状が現れ、治療が必要になります。

 先天性心疾患のなかで最も多く、約20%を占めるといわれています。欠損孔の位置により違いますが、約20~60%に自然閉鎖が認められます。

症状の現れ方

 欠損孔が大きい場合には、新生児期よりミルクを飲む量が少なく、体重の増え方が少なく、呼吸が荒く、汗が多いといった心不全症状が認められ、早期の治療が必要になります。中等度では前述した症状が徐々に認められますが、自然に欠損孔が閉じられていく場合には症状も軽くなっていきます。欠損孔が小さい場合には無症状で、心雑音のみが認められます。

検査と診断

 X線検査心臓超音波検査心電図検査などが行われます。とくに心臓超音波検査で心室中隔に欠損孔が見つかれば診断が確定します。必要な時には心臓カテーテル検査を行います。

治療の方法

 手術で欠損孔を閉じることが基本になります。内科的治療としては利尿薬強心薬血管拡張薬などが投与されますが、手術までの暫定的な意味合いとなります。

 欠損孔が大きく、症状を認める場合には内科的治療を行いつつ、検査の結果や、症状をもとに、手術を行うかどうか検討します。欠損孔が小さい、あるいは中等度の場合には、体重が増えてくるのを待つこともあります。自然に閉じた場合や、欠損孔がかなり小さい場合には手術の必要はありません。

病気に気づいたらどうする

 気になる症状がある場合、近隣小児科を受診します。主治医に指示を受けてください。

朴 直樹


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

内科学 第10版 「心室中隔欠損」の解説

心室中隔欠損(非チアノーゼ性心疾患)

(2)心室中隔欠損(ventricular septal defect:VSD)
疫学
 ASDと大動脈二尖弁についで多く,成人では漏斗部欠損(60%)が多い.VSDの多く(70~80%)は小児期に自然閉鎖するが,成人期も6~10%で自然閉鎖する.成人期VSDは少量短絡VSD,中等度短絡(Qp/Qsが1.5前後)でPHを認めないVSD,そして重度PHを合併する大きな欠損口を有するVSDがある(Eisenmenger症候群).左心房,左心室が拡大し心房細動を合併する場合がある.
臨床症状・検査成績
 一般のVSDと同様である【⇨5-8-4)】. 
経過・予後
 少量短絡の筋性,膜様部VSDの予後は良好で,日常生活の制限はないが,感染性心内膜炎の予防が必要である. [大内秀雄]
■文献
Nakazawa M, Shinohara T, et al: Study Group for Arrhythmias Long-Term After Surgery for Congenital Heart Disease: ALTAS-CHD study. Arrhythmias late after repair of tetralogy of fallot: a Japanese Multicenter Study. Circ J, 68: 126-130, 2004.
Ohuchi H, Kagisaki K, et al: Impact of the evolution of the Fontan operation on early and late mortality: a single-center experience of 405 patients over 3 decades. Ann Thorac Surg, 92: 1457-1466, 2011.
Shiina Y, Toyoda T, et al: Prevalence of adult patients with congenital heart disease in Japan. Int J Cardiol, 146: 13-16, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

家庭医学館 「心室中隔欠損」の解説

しんしつちゅうかくけっそんしょう【心室中隔欠損(症) Ventricular Septal Defect(VSD)】

[どんな病気か]
 心室中隔に孔(あな)が開いている(欠損)状態で(図「心室中隔欠損症」)、肺血流量が増加しています。もっとも頻度の高い先天性心疾患です。
 多呼吸、努力呼吸、哺乳(ほにゅう)困難などの症状がみられれば、乳児期早期、遅くても1歳までに治療します。
[治療]
 膜様部(まくようぶ)中隔欠損は、孔が自然に小さくなることがあるので、病状が許せば、1歳まで手術をしないでようすをみます。症状がなければ、治療を必要としないことがほとんどです。ただし、左心室(さしんしつ)の拡大や肺高血圧があれば、外科的治療が考慮されます。
 筋性部中隔欠損は、乳児期の外科的治療が困難なことがあります。この場合は、肺血管床を保護するために肺動脈絞扼術(はいどうみゃくこうやくじゅつ)(先天性心疾患とはの「外科的治療」の肺動脈絞扼術)を行ない、幼児期や学童期になってから、欠損部を閉鎖する手術をします。
 流出路部中隔欠損は症状がなくても、大動脈弁逸脱(だいどうみゃくべんいつだつ)と呼ばれる状態をともなうことがあります。この場合、大動脈弁の変形や大動脈弁閉鎖不全が存在し、手術が行なわれることがあります。

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世界大百科事典(旧版)内の心室中隔欠損の言及

【心音】より

…心雑音はI音,II音との関係,放散する方向,強度などによって,弁の異常,心臓内の欠損穴,心室壁の狭窄など,それぞれの部位や程度をかなり正確に判断することができる。例をあげれば,学童検診で,第4肋間胸骨左縁でI音からII音に続くような強い雑音があり,それが右の胸壁のほうへ放散しており,またII音から離れて短い遠雷音があるときには,先天性心疾患の心室中隔欠損があると診断することができる。また成人でI音からII音まで続く雑音があり,それが左側胸部から背部に放散していれば僧帽弁閉鎖不全と診断できる。…

【先天性心疾患】より

…先天性心疾患をもって生まれてくる子どもの数は,出生1000に対して6~10と推定されており,学童期になると1000人中約2人となる。この間の減少は乳幼児期に死亡するものの多いことと,心室中隔欠損の自然閉鎖による。いずれにしても小児期の心臓病の大多数を占めるものである。…

※「心室中隔欠損」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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