…それに対して民間怪談はしだいにグロテスクで退廃的な耽奇へ走り,因縁話的な色彩を求め,その結果,江戸時代後期になると,芸能,文芸を問わず,職業化した作者や演者による合巻,読本,歌舞伎等は,争って人間世界の邪悪な葛藤,それを原因とする殺人,加虐,そして血みどろな亡霊とその凄惨な復讐,あるいは,化猫,蛇の執着といったテーマに走るとともに,独自な妖美・淫虐な世界を作った。【高田 衛】
[怪談物]
観客の興味の中心を亡霊・妖怪などによる怪奇性の表現においた歌舞伎狂言。能楽・初期歌舞伎の中にも幽霊の形象は舞台化されてきたが,〈浅間物(あさまもの)〉の傾城奥州の亡霊などに代表されるごとく,凄味・恐怖観念を描出することはなく,むしろ美的な精霊として受容されていた。…
※「怪談物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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