精選版 日本国語大辞典 「恵方参」の意味・読み・例文・類語
えほう‐まいりえハウまゐり【恵ヱ方参】
- 〘 名詞 〙 年のはじめに恵方にあたる神社、仏閣に参詣して、その年の福徳を祈ること。恵方詣。《 季語・新年 》
- [初出の実例]「よき方 しやうけひんかし 恵方まいり」(出典:師守記‐貞治二年(1363)閏正月自一日至六日紙背)
恵方参の語誌
( 1 )年初における吉方(生気方・養者方)への参詣自体は一一世紀初頭にまで遡ることができる。しかし、平安時代は自分では参らずに献灯や奉幣を人に頼んだ例や正月以降に行なった例などがあって(但し時期は必ず立春以後)、実態は多様であった。また、「恵方参り」という熟語はまだ存在しなかった。
( 2 )挙例の室町初期の「師守記‐紙背文書」により、対象が「生気方」であった時期には既にこの熟語が生まれていたことがわかる。
( 3 )その年のよい方角に「恵(え)」を求めて参詣するということからまず「恵方参り」の語ができ、「兄(え)」と音が通じることによって、室町時代には「甲(木兄(きのえ))・庚・丙・壬」のいずれかである「歳徳」の方角の神社への参詣に変化し、大衆化していったと考えられる。それに伴い立春とは関係なく主に旧暦の元旦に行なわれるようになり、新暦採用後もそのまま引き継がれた。