日本大百科全書(ニッポニカ) 「患者運搬法」の意味・わかりやすい解説
患者運搬法
かんじゃうんぱんほう
介助を受けても歩行できない患者、歩行させてはいけない患者、意識のない患者などを移動あるいは移転させる方法のことで、患者の状態に応じて、徒手、車椅子(くるまいす)、輸送車、担架などを用いる。運搬にあたっては、患者の安全を守り、安楽でしかも迅速であることがたいせつである。そのためには、運搬用具の点検を十分に行う、患者の状態に応じた用具を選ぶ、患者に無理な姿勢、体位をとらせない、保温を十分にする、運搬時の振動をできるだけ少なくする、進行中に急速な方向転換をしないなどの注意が必要である。近年、病院では患者の安全、安楽を第一に考慮して、ベッドごと輸送できる設備を整えているのが普通である。
応急処置後の患者の運搬にあたっては、呼吸困難、出血、嘔吐(おうと)などに対する医療用具の準備が必要不可欠であるので、救急車を利用するのが安全である。徒手運搬の場合は、補助ベルトなどを使用するのもよい。乳児のだっこベルト、背負いベルトはそのよい例であり、緊急の場合は、シーツをバイヤス(斜角)に折って補助ベルトとして使用する。
[山根信子]