意図せざる効果(読み)いとせざるこうか

大学事典 「意図せざる効果」の解説

意図せざる効果
いとせざるこうか

諸個人の行為が集積された結果,その主観的意図とは異なる現象が生じることを意味する。アメリカの社会学者ロバート・マートン,R.K.(Robert K. Merton, R.K.)が,信念や思い込みに基づく行為が実現される自己成就的予言と,逆にその行為が裏切られる自己破壊的予言の概念を提示し,顕在的機能に対する潜在的順機能・逆機能という機能主義概念による一般化を行った。フランスの社会学者レイモン・ブードン,R.(Raymond Boudon, R.)は,方法的個人主義の立場から,産業社会において教育機会と職業機会が拡大する中で,社会上昇移動を企図する個人選択のさまざまな諸要因が,全体として複雑に交互作用することで,逆説的に社会的不平等が維持されるシミュレーションモデルを考案した。合理選択理論やゲーム理論における社会的ジレンマの一つである「共有地の悲劇」と呼ばれる状況も,共有資源の乱獲による枯渇を招く意図せざる効果の一種であると考えることができる。近年の大学改革がもたらした機能不全も,同様の観点から説明されることがある。
著者: 大前敦巳

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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