日本大百科全書(ニッポニカ) 「愛想づかし」の意味・わかりやすい解説
愛想づかし
あいそづかし
浄瑠璃(じょうるり)、歌舞伎(かぶき)の世話物における脚本、演出の一類型。恋愛関係の男女の間に葛藤(かっとう)がおこり、一方が無理に縁を切るために悲劇になる筋で、「縁切り」ともいう。多くは、女が、愛する男の出世や金策、または義理のため心にもなく縁を切ろうとするもので、近松門左衛門の『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』あたりに始まり、江戸時代中期以後は定型化した。女の愛想づかしを本当の心変わりと思い込んだ男が、怒って女を殺傷する筋に発展する場合が多く、『五大力(ごだいりき)』『お妻(つま)八郎兵衛』『伊勢音頭(いせおんど)』『お祭佐七(さしち)』などは適例。構成がやや複雑で、別に情夫のいる女が、片思いの男に愛想づかしをするものに『三五大切(さんごたいせつ)』『縮屋新助(ちぢみやしんすけ)』『籠釣瓶(かごつるべ)』がある。
[松井俊諭]