日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦数」の意味・わかりやすい解説
戦数
せんすう
Kriegsräson ドイツ語
クリーグスレーゾン、戦時非常事由または交戦条理といわれることもある。戦争に際して、交戦国が戦争法規を遵守することによって重大な利益が危険となるような緊急事態があるときは、戦争法規の拘束から解放され、そのような場合の違法行為は違法性を阻却されるという理論。とくに第一次世界大戦直前のドイツの国際法学者によって主張された。これに対して、アメリカやイギリスの学者はこぞって反対した。個々の法規について、その遵守が軍事的に不可能となることがあることは認めねばならないが、一般的に戦数理論を認めると、戦争法規の意味はほとんどなくなってしまうであろう。第二次大戦後における戦争法規のもっとも重要な国際立法たる1949年のジュネーブ諸条約も、締約国は「すべての場合において」この条約を尊重し、かつ尊重を確保することを約束しており、遵守義務を免れる例外的場合を認めてはいない。
[石本泰雄]