扁平母斑(読み)へんぺいぼはん(英語表記)Nevus spilus

六訂版 家庭医学大全科 「扁平母斑」の解説

扁平母斑
へんぺいぼはん
Nevus spilus
(皮膚の病気)

どんな病気か

 いわゆる“茶あざ”です。体のさまざまな部位に扁平な、点状から面状に分布する茶褐色色素斑(しきそはん)がみられます(図67)。生まれながらにあるものと、思春期ころに現れるもの(遅発性(ちはつせい)扁平母斑)とがあります。通常は発毛は伴いません。いわゆる“茶あざ”のなかには、とくに男性の肩甲部(けんこうぶ)胸部片側に、思春期ころから目立ってくる少し濃い発毛を伴うベッカー母斑もあります。

 生まれた時に6個以上のミルクコーヒーのような色素斑(カフェオレ斑)がある場合は、後述のレックリングハウゼン病のこともあります。

検査と診断

 茶褐色の平らな色素斑があれば扁平母斑と考えるか、後述のほくろであることが多いでしょう。皮膚科または形成外科で相談してください。

治療の方法

 扁平母斑は自然には消えません。本人が気になるものが治療対象になります。従来はドライアイスをあてたり、グラインダーで削ったりしていましたが、最近ではレーザー(Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなど)を照射すると、消失したり軽快します。

 ただ、レーザーを照射してしばらくは消えていたものが次第に再発する場合もしばしばあります。あとで述べる太田母斑や他の項で述べている血管腫(けっかんしゅ)に比べて再発率は高いことを承知しておいてください。

 なお扁平母斑は、レーザーの機種によって保険が適用されるものとそうでないものとがある(2009年現在)ので、担当医に確認してください。

病気に気づいたらどうする

 扁平母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。気になる場合は皮膚科、形成外科などを受診してください。レーザーは各病院に設置しているわけではないので、近くの医院から紹介してもらうのがよいでしょう。

 また、茶あざで数が多い場合はレックリングハウゼン病である可能性があるので、早めに医師と相談してください。

 ベッカー母斑は海水浴や強い日光にさらされたあとなどに現れることがあります。これもレーザーの効果がある疾患です。

安田 浩


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「扁平母斑」の解説

へんぺいぼはん【扁平母斑 Nevus Spilus】

[どんな病気か]
 皮膚面から隆起しない淡褐色の色素斑(しきそはん)で、大きさや形はさまざまです。小さい色素斑が多数集まっていたり、比較的均一な大きい色素斑であったりします。
 発症時期は、出生時・乳幼児期と、思春期前後です。乳幼児に扁平母斑が数個以上あるときは、レックリングハウゼン病の可能性があるので、専門医を受診してください。
[治療]
 色が淡い褐色調で、肌と違和感が少ないため、気にならなければ、むりに治療する必要はありません。レーザー治療を行なうことが多いのですが、色が薄れる場合と、逆に濃くなる場合があります。そのほか、ドライアイス治療や、皮膚削り手術などが行なわれますが、効果はあまり満足できるものではありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内の扁平母斑の言及

【あざ(痣)】より

…一般に乳児にはほくろは認められず,10歳前後から徐々に増えてくるものであるが,ある程度以上の大きなものや,毛の密生する獣皮様母斑tierfell nevusと呼ばれるものは生下時から存在する。扁平な褐色斑は扁平母斑nevus spilusと呼ばれ,生後数ヵ月以内に気づくことが多いが,肩,胸などに10歳を過ぎて現れてくるものもある。
[表皮母斑epidermal nevus]
 表皮細胞の肥厚によるもので,線状の配列をとるものが多く,表面はざらざらして硬く触れ,色は褐色調を示すものから黒褐色のものなどがある。…

※「扁平母斑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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