家庭医学館 「母斑細胞母斑」の解説
ぼはんさいぼうぼはんしきそせいぼはんくろあざほくろ【母斑細胞母斑(色素性母斑/黒あざ/ほくろ) Nevocellular Nevus, Nevus Cell Nevus】
母斑細胞母斑ないし色素性母斑は、皮膚の表面(表皮内)および真皮(しんぴ)内の母斑細胞からなる良性のあざです。
大きさと形はさまざまで、色は褐色ないし黒色です。表面は、平らのもの、軽く隆起(りゅうき)したもの、でこぼこしたものとさまざまです。
あざのなかではもっとも一般的にみられるもので、健常な人でも最低2~3個の母斑細胞母斑があるといわれています。平均は14~15個です。
出生時すでにみられるものを先天性母斑(せんてんせいぼはん)、生後のいろいろな時期から現われるものを後天性母斑(こうてんせいぼはん)といいます。
一般的には、その大きさによって、ほくろないし黒(くろ)あざと呼ばれています。
長径が20cm以上にもなる大きな黒あざは、巨大色素性母斑(きょだいしきそせいぼはん)で、しばしば濃い毛が生えています。
なお、黒いあざが急に増大する、変形する、境界が不鮮明になり黒い色がしみだしたようにみえる、炎症をおこして赤くなる、出血する、一部が隆起する、潰瘍(かいよう)ができる、などの場合は悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)の疑いがあります。早めに専門医の診察を受けましょう。
[治療]
小さいものは、放置しておいてもかまいません。年月とともに盛り上がってくる場合は、整容のためにレーザー治療や切除を行なってもよいでしょう。
ただし、巨大色素性母斑の場合は、その一部から悪性黒色腫が発症してくることがまれにあります(巨大色素性母斑全体の5~6%の確率です)から、注意しましょう。
大きな黒あざは、子どもにとって精神的なハンディキャップになることが多いですから、手術治療を行なうのが望ましいでしょう。
手術方法には、何回かに分けて縫い縮めていく方法、からだのほかの場所から皮膚を移植する方法(植皮術(しょくひじゅつ))や、皮膚の下に特殊な風船を入れてそれをふくらませ、伸びた皮膚で病変部をおおう方法(スキンエキスパンダー法)、隣接した皮膚をもちあげて患部をおおう方法(皮弁術(ひべんじゅつ))などがあります。病変の大きさや部位、形などからふさわしい方法が選択されます。手術時期は、3歳以降が適当です。
ぼはんさいぼうぼはんしきそせいぼはんほくろくろあざ【母斑細胞母斑(色素性母斑/ほくろ/黒あざ) Nevocellular Nevus, Nevus Cell Nevus】
俗に「ほくろ」「黒あざ」と呼ばれているのが、母斑細胞母斑です。メラニン色素をつくる細胞が、皮膚で異常に増えてできます。色は、褐色から黒色で、境界がはっきりし、大きさ、形はさまざまです。盛り上がっていることも、平らなこともあります。表面はなめらかなことも、でこぼこのこともあります。
平らで大きいもの(黒あざ(「母斑細胞母斑(色素性母斑/黒あざ/ほくろ)」))は、先天性のことが多く、後天性のものは、通常、小さくて隆起しています(ほくろ)。表面に毛が生えている有毛性母斑(ゆうもうせいぼはん)や、からだの広い範囲に有毛性色素斑ができる獣皮様母斑(じゅうひようぼはん)などもあります。
先天性の巨大な母斑細胞母斑は、そこに悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)(ほくろのがん)ができることが多いため、注意が必要です。それ以外の母斑細胞母斑から悪性黒色腫ができることはまれです。しかし、色素斑が急に大きくなったり、出血したり、潰瘍(かいよう)ができたりしたときは、悪性黒色腫の初期である可能性があります。早めに皮膚科の専門医を受診してください。
[治療]
大きさや部位によって、治療法は異なります。悪性化する可能性や美容上の問題がなければ、放置します。治療の基本は切除です。大きい場合は植皮術をします。電気凝固(でんきぎょうこ)やレーザー照射をすることもあります。