拡張係数(読み)カクチョウケイスウ

化学辞典 第2版 「拡張係数」の解説

拡張係数
カクチョウケイスウ
spreading coefficient

液体aと液体bとの表面張力を,それぞれ γaγb とし,aとbの界面張力γab とすると,aの上でbが広がるか広がらないかは次の関係で判断される.

Sγaγbγab

これを拡散係数(または広がり係数)という.また,aとbとの付着仕事を WA,bの凝集の仕事を WC とすると

WAγaγbγab

WC = 2γb

であるから

SWAWC

となる.したがって,WAWC に応じて,S ≶ 0となり,S > 0のときはbはaの上に広がり,S < 0のときはbはレンズ状に液滴となる傾向が予想される.これは主として,W.D. Harkinsの研究(1922年)によるものである.水の表面における有機液体の拡張係数中の代表的なものをあげると(単位は N cm-1),低級アルコール類および脂肪酸類では約(4~5)×10-4,ベンゼンで(7~8)×10-5,四塩化炭素1.06×10-5,二硫化炭素-6.94×10-5流動パラフィン-1.364×10-4.なお上記の考え方は,固体表面上の液体の広がりについても用いられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 「拡張係数」の解説

拡張係数【spreading coefficient】

ある液体が,これと混ざらない別の液体か,もしくは溶解しない固体の表面にあって,広がろうとする傾向を表す量である.たとえば油1滴を水面上に落とした場合,その接触面では次の三つの力が働く.すなわち水の表面張力 γw,油の表面張力 γo,さらに水と油の界面張力 γwo である.もし γw>γo+γwo ならば油は水面上に広がるが,逆の場合には水面にレンズ状の油滴となって浮く.

そこで S=γw-(γo+γwo)なる値をとると,これが油滴の水面上に広がる能力の目安となるが,これを「拡張係数」と呼ぶ.S正負で,油が広がるかどうかが定まる.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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