拾遺古徳伝(読み)しゅういことくでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「拾遺古徳伝」の意味・わかりやすい解説

拾遺古徳伝
しゅういことくでん

鎌倉末期の絵巻。9巻。茨城・常福寺蔵。法然上人(ほうねんしょうにん)の行状を説いたもので、1301年(正安3)本願寺3世覚如(かくにょ)が常陸(ひたち)国(茨城県)の門徒要請によって起草した伝記を、絵画化したもの。真宗の立場からつくられ、親鸞(しんらん)が法然門下の正統であることを主張したもので、両者の関係が詳しく述べられ、他の浄土宗系の「法然絵伝」とは内容を異にする。第9巻の奥書により1323年(元亨3)の制作とわかる。絵は鎌倉末期の伝統的な大和(やまと)絵の画風を示す。

[村重 寧]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の拾遺古徳伝の言及

【法然上人絵伝】より

…新宗派浄土宗を立て,専修念仏を説いて念仏信仰を広めた,法然上人の生涯の行状を描いた絵巻。法然没後25年の1237年(嘉禎3)に作られた《法然上人伝法絵》(2巻,原本は遺らず)が最も早く,しだいに内容を増大させ,〈増上寺本〉,九巻本《法然聖人伝絵》(琳阿本),1301年(正安3)撰の《拾遺古徳伝》,《法然聖人絵》(弘願本,4巻が知られる)などの諸本,さらに全48巻の浩瀚な《法然上人行状絵図》(知恩院)に至るまで,浄土宗の発展とともに多種多様な傑作が生み出され広まっていった。それとともに鎌倉末期ころよりはじまる,絵巻の小画面を大画面に移した掛幅絵伝(妙源寺本,西導寺本など)にも見るべきものが多い。…

※「拾遺古徳伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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