一般的には,智徳を備えた僧への敬称。また法橋上人位(ほつきようしようにんい)の略称。864年(貞観6)僧位三階(僧位)の一つとして法橋上人位が設けられ,僧官の律師階に相当した。この上人号は,後世,僧官制が乱れるとともに,諸宗や民間で転用かつ私用されるようになった。平安中期から本寺を離れて別所に隠遁したり,回国遊行して修行,作善勧進する僧が現れ,彼らを上人,聖人,聖(ひじり)などとよぶことが一般化した。上人号をもって世人から敬慕された最初は空也といわれる(《諸門跡譜》《和訓栞》)。室町~江戸時代には各宗で上人号の綸旨を受けることが行われた。その綸旨を受けると,香衣を着ることができた。浄土宗では上人号を受けることを出世といった。浄土系諸宗や日蓮宗では僧の通号となっている。浄土宗では〈誉〉の字を用いて何誉上人,浄土真宗では〈如〉の字を用いて何如上人,時宗は〈阿〉の字を用いて何阿上人,日蓮宗は〈日〉の字を用いて日何上人と号する。
執筆者:伊藤 唯真
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仏・菩薩や徳行に秀でた聖者,高徳な僧侶に対する敬称。中世以降はとくに遁世した僧侶に対する呼称となり,時宗では阿号,浄土宗では誉号,浄土真宗では如字,日蓮宗では日字につけられて使用されたほか,禅僧・律僧にもみられる。聖(ひじり)・聖人と混用されるが,15世紀初頭前後からは上人号として勅許され,一種の僧位に転じた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…住職という呼称は,今日では宗派を問わず多く用いられているが,歴史的にみると,寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により,またそれぞれの寺院によって,さまざまの異称や尊称がある。南都系や平安仏教系寺院では寺主(じしゆ),維那(いな),院家(いんけ),隠元(いんげん),浄土真宗や日蓮宗(法華宗)や時宗では上人(しようにん),禅宗では方丈,和尚,住持,長老(ちようろう)などの,住職をさす尊称がそれである。また,由緒ある大寺院ではその寺固有の歴史的呼称もある。…
…また仏・菩薩を聖人と名づける場合もある(《大般涅槃経》聖行品)。上人と音が同一のため混用される。また上人をさらに尊んでいう場合に聖人の語を用いる。…
※「上人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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