改訂新版 世界大百科事典 「搔敷」の意味・わかりやすい解説
搔敷 (かいしき)
食物を盛るとき器に敷くもの。改敷,皆敷,飼鋪などとも書く。木の葉などに食物を盛った古代の遺風と考えられぬこともないが,料理などに景容を添えることを目的にしたと思われる。室町時代に料理の流派が成立すると,流派ごとに複雑煩瑣(はんさ)な形式がつくられた。《庖丁聞書》(室町末成立?)の〈改敷品々之事〉には,アワビには海草,スズキにはエノキの葉,生のカツオにはニワトコ,アユにはフジの葉,ガンには水草,ツルにはアシの葉などといった組合せが記されている。おもに植物の葉が使われ,とくに檜葉(ひば)やナンテンが多用されたが,まれには羽改敷(はがいしき)といって鳥の羽を切ってひろげ,その上に檜葉を置くというようなものもあった。現在では紙も使われ,またササの葉の利用が多いが,《貞丈雑記》は,ササの葉を搔敷にするのは切腹のときだから,忌むべきものだといっている。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報