ニワトコ(読み)にわとこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニワトコ」の意味・わかりやすい解説

ニワトコ
にわとこ / 接骨木
[学] Sambucus racemosa L. subsp. sieboldiana (Miq.) Hara

スイカズラ科(APG分類:ガマズミ科)の落葉低木。高さ2~6メートル。葉は羽状複葉。3~5月、円錐(えんすい)花序をつくり、5数性の小花を多数集めて開く。花冠は淡黄色、裂片は反り返る。子房は下位で3室。果実球形、9~10月、赤色に熟す。本州から九州、および朝鮮半島に分布し、北海道には花序の粒状突起が長い変種エゾニワトコがある。庭木として植えられ、早春の切り花とする。葉は発汗、利尿に効果があり、民間薬とする。髄は顕微鏡観察用の切片をつくるのに用いる。

 ニワトコ属は北半球、アフリカ北部、東南アジア、オーストラリア東部、ニュージーランド、南アメリカに約25種分布する。セイヨウニワトコS. nigra L.はヨーロッパに産し、花を薬用とし、果実でワインをつくる。

[福岡誠行 2021年12月14日]

文化史

古くはヤマタヅとかミヤツコギ(造木)とよばれた。『万葉集』の「君が行き日(け)長くなりぬやまたづの迎へを往(ゆ)かむ待つには待たじ」(巻2.90)の注釈に「ここにやまたづといふは、これ今の造木(みやつこぎ)をいふ」と載る。ニワトコは葉が対生するので、相対する迎えに懸けられている。接骨木は中国名で、打撲症や骨折にその濃い煎汁(せんじゅう)を湿布に用いたことにちなむ。プリニウスの『博物誌』(1世紀)によると、古代ローマではそのねばねばした黒い実を毛染めに使った。

[湯浅浩史 2021年12月14日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニワトコ」の意味・わかりやすい解説

ニワトコ
Sambucus sieboldiana; elder

スイカズラ科の落葉低木。アジア東部の温帯に広く分布する。本州,四国,九州の山野に自生し,庭木としても植えられる。枝は軟らかくて太い髄 (ピス) があり,この髄を顕微鏡観察の切片をつくる際に利用するので有名である。葉は対生し,5~7片の小葉から成る奇数羽状複葉。3~4月に,枝端に円錐花序をなし,淡黄白色の小花を多数開く。果実は球形または楕円形の液果で,6~7月に赤く熟して美しい。材を接骨木と称し,煎じ液は骨折,打撲症に用い,葉は利尿剤になる。

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