擘・劈(読み)つんざく

精選版 日本国語大辞典 「擘・劈」の意味・読み・例文・類語

つん‐ざ・く【擘・劈】

[1] 〘他カ五(四)〙 (古くは「つむさく」と表記。原義は「抓(つ)み裂(さ)く」で爪の先で植物などを裂き分かつ意。→つみさく)
① 手や爪で裂く。
※大東急記念文庫本熾盛光仏頂儀軌天承元年点(1131)「甜脆(てんぜい)等を皆須く擘(ひらき)(別訓 ツムサキ)砕(くだ)いて」
② 強く破る。
太平記(14C後)七「龍伯公が力を得ずば山をも擘(ツンザキ)難し」
[2] 〘自カ下二〙 ⇒つんざける(擘)
[語誌](1)「つみさく」の音便形。「つきさく」の音便とする説があるが、平安・鎌倉時代の訓点資料や古辞書の類に「つみさく」「つむさく」は見出されるが、「つきさく」は見えない。また、中古以来の音韻変化の例からみて、キの音便は一般にイであって、ム(ン)に転じた例は見出せない。「つきのめる」「ひきむく」を「つんのめる」「ひんむく」とするようになったのは近世以降の現象といわれる。また、語義上も古例の用法は「突き裂く」の意味とは解し得ない。
(2)アクセントの面を名義抄でみても、「つむざく」は「上平平濁上」であり、「つむ」が「上平」、「さく」が「平上」であることは、「抓み(む)裂く」を語源とすることに矛盾しない。

つん‐ざ・ける【擘・劈】

〘自カ下一〙 つんざ・く 〘自カ下二〙 勢いよく破れる。強く破裂する。
※二日物語(1892‐1901)〈幸田露伴〉此一日「今は金輪崩るるとも、銕囲劈裂(ツンザ)け破るるとも、思ふ事果さでは得こそ止まじ」

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