教頭ワーグナー(読み)きょうとうワーグナー

改訂新版 世界大百科事典 「教頭ワーグナー」の意味・わかりやすい解説

教頭ワーグナー (きょうとうワーグナー)
生没年:1874-1938

本名はエルンスト・ワーグナーErnst Wagner。パラノイアの妄想から大量殺人を犯した世界犯罪史上でも有数の症例。ドイツのエグロスハイムで貧農の子として生まれ,苦学して小学校の助教員になる。27歳のときミュールハウゼンという村で飲酒のあと獣姦を犯し,村人がこれを知ってうわさし合っていると思いこみ,憎悪敵意をいだくようになる。のちに結婚して5児をもうけるが,なおも周囲の嘲笑侮辱を感じ,彼らへの憤怒から村の殲滅せんめつ)計画が芽生える。こうして1913年9月4日未明,睡眠中の妻子5人をまず殺してから,ミュールハウゼンへ向かい,その夜,村の家屋に放火し,鉄砲を乱射して村人9人を殺し,12人に重傷を負わせて捕らえられる。精神鑑定で〈精神病のため責任無能力〉と判定され,ウィネンタールの精神病院へ移され,ここで一生を終える。ルートウィヒ2世を題材とする戯曲《妄想》(1921)を作るなど,文学的野心も強かった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の教頭ワーグナーの言及

【パラノイア】より

…妄想の主題は血統,発明,宗教,好訴,恋愛,嫉妬,心気,迫害などで,40歳以後の,とくに男性に多いとされる。しかし,この規定にかなうケースは少なく,ガウプの観察した有名な〈教頭ワーグナー〉(1914)などがその典型として挙げられるが,それ以後,日本をふくめて世界的にほとんど報告例を見ない。それにもかかわらず,パラノイアはかつての人間的狂気の典型として今なお精神医学のなかで特異な輝きを失っていない。…

※「教頭ワーグナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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