日本大百科全書(ニッポニカ) 「新修本草」の意味・わかりやすい解説
新修本草
しんしゅうほんぞう
中国の本草書。唐代に高宗(こうそう)が蘇敬(そけい)らに書かせた中国最古の勅撰(ちょくせん)本で、主流本草である。陶弘景(とうこうけい)の『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)集注』を増訂したもので、新附品は115種類に及び、これらのなかには阿魏(あぎ)、訶梨勒(かりろく)、胡椒、底野迦(ていやか)など西域(せいいき)からの輸入品が多く含まれ、当時西域との交流が盛んに行われていたことをうかがわせる。日本へも遣唐使が早い時期に持ち帰り、奈良、平安時代には典薬寮の医学生の教科書として用いられていた。宋(そう)代初期に『開宝本草』が出版され、『新修本草』の内容が受け継がれてからは、その価値が失われ忘れられてしまった。江戸時代に古鈔本(こしょうほん)の残巻が発見され、また20世紀には、敦煌(とんこう)の石窟(せっくつ)から古鈔断簡が発見され、これらを基にして岡田為人が『新修本草』の復原を試み、1964年台湾で『重輯(じゅうしゅう)新修本草』と題して出版され、さらに1978年(昭和53)には日本で朱墨雑書の形式で再版された。なお『新修本草』には彩色された「図経」があったが、逸して伝わっていない。
[難波恒雄・御影雅幸]