日本大百科全書(ニッポニカ) 「新生児出血」の意味・わかりやすい解説
新生児出血
しんせいじしゅっけつ
hemorrhage of the newborn
もっとも知られているのは新生児メレナmelena neonatorum(新生児消化管出血あるいは新生児下血)とよばれるビタミンK欠乏による新生児出血性疾患である。ビタミンKは血液凝固因子(プロトロンビン第Ⅶ、第Ⅸ、第Ⅹ因子)に関与し、通常、人間においては腸管内の細菌がそれをつくっている。新生児は母体からのビタミンKが不十分であるばかりでなく、腸管が無菌的であり、細菌が常在するまでの間はビタミンKの産生は不十分となる。したがって、生後4、5日の間におもに消化管出血を主とした症状がみられる。出生時にビタミンKを投与することによって容易に予防できる。メレナのなかに、出生時のストレスが原因と考えられる急性胃粘膜障害による一時的な吐血が少なからず混在していることが知られている。
このほか、血友病、母親の血小板減少症などに伴って児にも一時的におこる血小板減少症、母親が服用した血液凝固阻止剤(「ワーファリン」など)や催眠鎮静剤(「フェノバルビタール」など)の薬物などによる新生児の出血性疾患も知られている。
[仁志田博司]