方位量子数（読み）ホウイリョウシスウ

デジタル大辞泉

ほうい‐りょうしすう〔ハウヰリヤウシスウ〕【方位量子数】

原子内における、電子の軌道角運動量の大きさを特徴づける量子数。方位量子数lは0または正の整数で表され、主量子数をnとすると、上限はn－1となる。

出典　小学館

化学辞典 第2版

方位量子数
ホウイリョウシスウ
azimuthal quantum number, quantum number of orbital angular momentum

電子の軌道角運動量は，lを0以上の整数として

で表され，このlを方位量子数という．また多電子原子においては，合成軌道角運動量に関する方位量子数をLと書く．球対称の場でスピン-軌道相互作用が小さい場合には方位量子数は“よい量子数”となり，系の状態を指定する．そのような状態は一電子系の場合l ＝ 0，1，2，3，…に対応してs，p，d，f，…の記号で表され，多電子系ではL ＝ 0，1，2，3，…に対応してS，P，D，F，…の大文字が使われる．

出典　森北出版「化学辞典（第2版）」

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

方位量子数
ほういりょうしすう
azimuthal quantum number

軌道量子数ともいう。軌道角運動量 l の 2乗 l²の固有値をℏ²l（l＋1）（ℏ はディラック定数）と表すときの 0または正の整数 l を方位量子数と呼ぶ。l＝0，1，2，3，… に対して s，p，d，f，… という記号を用いることが多い。多粒子系では，l の代わりに L，s の代わりに S のように大文字を用いる。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

世界大百科事典（旧版）内の方位量子数の言及

【原子】より

…すなわち，ボーアの原子模型ではn＝lの状態を考えていることになるが，量子力学ではn＞lの定常状態しか存在しない。nは主量子数，lは角運動量量子数，あるいは方位量子数と呼ばれる。lが0,1,2，……の状態を，分光学的な起源をもつ記号s,p,d，……で表す慣習があり，1sのsはこれによるものである(これについては〈原子スペクトル〉の項目に詳しく述べてある)。…

【量子数】より

…そのなかに時間がたっても変わらないものがあればよい量子数という。水素原子の電子のエネルギー固有状態は，(エネルギー)^－2，角運動量の大きさとz成分，スピンのz成分のそれぞれの固有値に当たる主量子数n，方位量子数l，磁気量子数m，スピン量子数σの四つで一意に標識される。スピン軌道相互作用まで考える精度ではmとσはよい量子数ではない。…

※「方位量子数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」