日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本料理法大全」の意味・わかりやすい解説
日本料理法大全
にほんりょうりほうたいぜん
料理書。著者は江戸幕府諸藩料理師範で、明治になって宮内省大膳(だいぜん)職庖丁(ほうちょう)師範を務めた石井治兵衛。1898年(明治31)刊。古典料理書のなかで江戸初期の『料理物語』と双璧(そうへき)をなす不朽の名著といわれる。1500ページ余に及ぶ大部で、日本料理の沿革から書き起こし、四条流の起源、発達、分派などから、料理法、包丁切形(きりかた)、大草(おおくさ)流料理法、勅使・宮家の隅田川御遊覧の料理や日光山御法会(ほうえ)など公式料理の献立集が紹介され、ついで「いろは」別に膨大な料理名と解説がなされていて、その博覧強記ぶりは本書の圧巻である。日本料理だけでなく、中華、洋食、菓子の作り方まで出てくるから興味は尽きない。さらに江戸期の婚礼料理、幕末から明治初期の著名料理店の献立、古代から江戸期に至るまでの有名料理人の名前と逸話が書き添えてあり、日本料理人紳士録にもなっている。
[小柳輝一]