日野郡(読み)ひのぐん

日本歴史地名大系 「日野郡」の解説

日野郡
ひのぐん

面積:六九九・九八平方キロ
溝口みぞくち町・江府こうふ町・日野ひの町・日南にちなん

県および旧伯耆国の南西部に位置する。北は東伯とうはく関金せきがね町・東伯町、西伯さいはく郡大山町・岸本きしもと町・会見あいみ町・西伯町、島根県能義のぎ伯太はくた町・広瀬ひろせ町、西は同県仁多にた横田よこた町、南は広島県比婆ひば西城さいじよう町・東城とうじよう町、岡山県阿哲あてつ神郷しんごう町・大佐おおさ町、同県新見市、東は同県真庭まにわ新庄しんじよう村・川上かわかみ村に接する。日野川の上・中流域にあたる。同川は鳥取・島根・広島の県境にまたがる三国みくに(一〇〇四・一メートル)を水源として郡内を北東流し、江府町域で北西に流れを変える。中国山地の一環をなす高原地帯に立地するため、県境は毛無けなし(一二一八・四メートル)花見はなみ(一一八八メートル)道後どうご(一二六八・九メートル)船通せんつう(一一四二・五メートル)など一〇〇〇メートル級の山が多い。米子から日野川沿いを遡上する国道一八一号は日野町根雨ねうで分岐し、四十曲しじゆうまがりトンネルを抜けて岡山県に至る。米子市から南下して日野町西端部で日野川に出る国道一八〇号は同川沿いを根雨まで下り、明地あけちトンネルを抜けて同じく岡山県に入る。同国道から分岐して日野川沿いを遡上する国道一八三号は鍵掛かつかけ峠を越えて広島県に至る。JR伯備線は同川沿いを通り、日南町生山しようやまで分岐して谷田たんだトンネルを抜け、岡山県とをつなぐ郡内唯一の鉄道である。

「出雲国風土記」仁多郡の条に「伯耆の国日野の郡の堺なる阿志縁山」とみえるのが郡名の初見とされる。出雲国大原おおはら郡に斐伊ひい(現島根県木次町)があり、その地に祀られている樋速日子命の「樋」にちなんだ郷名といわれ(同書)、「伯耆志」は「古事記」にみえる鳥髪とりかみ(船通山)の西側・東側がかつてとよばれていたとし、日野は樋から生じたと郡名の由来を説く。したがって鳥髪山を水源として出雲を流れるのが斐伊川、伯耆を流れるのが日野川であるという。「伯耆志」はまた、雲伯両国境地帯が「無数の銕を出し、旦夕これを鞴きて国産の魁」となっているのは樋速日子命の霊によるためで、これから「ヒ」の地名が生じたと記しているが、これは製鉄にかかわる伝承でもある。なお旧郡域は現在の郡域と大差ないが、昭和三〇年(一九五五)の西伯郡岸本町成立まで同町東部をも含んでいた。

〔原始・古代〕

郡内の遺跡の分布は、溝口町・江府町を中心とする大山南西麓の河岸段丘や高原に多くみられ、日南町・日野町の山間部は少ない。溝口町の長山馬籠ながやままごめ遺跡からは旧石器時代のものと推定される細石刃が発見されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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