…《万葉集》に〈梅の花咲きたる苑(にわ)の青柳は蘰(かずら)にすべくなりにけらずや〉とか〈あしびきの山下日蔭かづらける上にやさらに梅をしのばむ〉などとあるのがこの例である。ことに神事における〈ひかげのかずら〉や〈ゆうかずら〉は後世までもその形式が残り,大嘗祭(だいじようさい)には冠の巾子(こじ)から細いあげ巻の組ひもを結びたれ,これを〈ひかげの糸〉ともいい,木綿かずらのほうも,大和舞の舞人などが冠に紙の幣をつけることになごりをとどめた。 なお,かずらは髪飾のほか,頭髪の少ないのをおぎなうかもじ(髢)や,毛髪で髷形(まげがた)をつくり頭にかぶって扮装する鬘(かつら)の意にも用いる。…
※「日陰の糸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」