日本大百科全書(ニッポニカ) 「時間帯別運賃」の意味・わかりやすい解説
時間帯別運賃
じかんたいべつうんちん
ある交通機関を利用するときに、利用する時間に応じて異なる運賃率で設定される運賃あるいはその制度。通常は1日をいくつかの時間帯に区分して、それぞれの時間区分に応じて課される運賃のことをさす。ダイナミック・プライシングの一つとしてよばれることもある。
ピーク時の過大な需要をオフピーク時に移して需要を平準化させるために、時間帯別運賃が考えられることが多い。このことによって混雑を緩和し、最終的にはサービス提供に必要な設備投資量を抑制する(ピーク時には必要な設備であっても、オフピーク時にはむだになるような設備をもつ必要がなくなる)ことが期待されている。
ただ、ピーク時の運賃を高くすることは、利用客の理解が得られにくいために実施がむずかしい。また、かりに運賃を高くすることができたとしても、通勤客の場合、日本では勤務地までの交通費は企業負担となることが多いため、ピーク時の値上げの実効性が疑問視されることもある。そのため、実際にはオフピーク時の利用を促すような割引運賃を設定し、相対的に割高になるピーク時から需要を誘導させるようにすることが多い。
時間帯別運賃は社会的受容が進みつつあり、社会実験も含めて高速道路料金や鉄道運賃などでその例をみることができる。
[竹内健蔵 2023年12月14日]
『山内弘隆・竹内健蔵著『交通経済学』(2002・有斐閣)』▽『竹内健蔵著『交通経済学入門(新版)』(2018・有斐閣)』