鉄道運賃(読み)てつどううんちん

精選版 日本国語大辞典 「鉄道運賃」の意味・読み・例文・類語

てつどう‐うんちんテツダウ‥【鉄道運賃】

  1. 〘 名詞 〙 旅客または荷主が、旅行あるいは物の運送のため鉄道を利用する場合に鉄道事業者に支払う対価。旅客運賃貨物運賃とがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄道運賃」の意味・わかりやすい解説

鉄道運賃
てつどううんちん

鉄道事業者の輸送サービスに対して、利用者が対価として支払う対価。鉄道運賃の決定は、(1)法律によって決定する、(2)国の認可とする、(3)最高運賃のみを国の認可とし、それ以下は鉄道事業者が自主的に決定する、(4)鉄道事業者が自主的に決定する、の四つの場合がある。ヨーロッパの鉄道運賃は原則自由化されている。日本の国鉄(現JR)は、1977年(昭和52)に、一定範囲に限定して、従来の法定運賃主義から、運輸大臣(当時)の認可による運賃の決定にかわり、私鉄運賃と同様の取扱いとなった。さらに1997年(平成9)からは私鉄も含めて、上記(3)の上限価格制となった。鉄道がその国の独占的な交通機関であった時代には、各国とも運賃の決定に関して国の規制が強かったが、自動車や航空機との競争がみられるようになってからは、自主性が重んじられるようになった。

 日本の鉄道運賃の価格規制方式は、総括原価方式を基本としている。計算方法としては、レートベース方式がある。これは、純正資産価値(レートベース)に公正報酬率を乗じて資本報酬を決めるもので、公正報酬率は「他人資本比率」×「他人資本利子率」+「自己資本比率」×「自己資本利潤率」で算定される。利子率と利潤率の値を規制機関(政府)が決めたうえで、同じ値を当該産業の全事業者に適用することとしている。

 鉄道運賃は旅客運賃と貨物運賃に大別される。旅客運賃には、(1)輸送される距離を反映して旅客1人が何キロメートルの距離を輸送されるかを基準とした対キロ制、(2)一定の区間を設定して区間ごとの運賃を決める区間制、(3)全線または一定の区間に均一の運賃を設定する均一制がある。対キロ制の場合には、単純な距離比例制と一定の距離以上では割安となる遠距離逓減(ていげん)制がある。鉄道の旅客運賃には、普通運賃とは別に、一定の区間を通勤・通学する旅客が利用する定期運賃があり、一定の割引率が適用される。また、一定の区間を利用する旅客が利用するものに回数乗車券があり、10%程度の割引率が適用される。

 国鉄は長年にわたって全国一律運賃制を実施してきたが、1984年から幹線と地方交通線に賃率の異なる運賃制を導入した。鉄道の旅客運賃には、特別なサービスの利用料金として、特急・急行料金、寝台料金、グリーン料金などがある。これらは国鉄からJRになったあとも同様である。近年、需要開拓と収入確保の観点から、季節に応じた割引・割増料金の設定、団体旅客の営業割引、フルムーン夫婦グリーンパスなどの企画運賃が導入されている。また、65歳以上の男性および60歳以上の女性を対象とした「ジパング倶楽部(クラブ)」に入会すると割引運賃が利用できる。

 鉄道の貨物運賃は、長年にわたって貨物の価格に基づいて分類した従価等級制度を設定し、運賃に格差を設ける負担力運賃が適用されてきた。しかし、鉄道と競争関係にあるトラックや内航海運の運賃に等級制度はない。日本の国鉄は、1980年に従価等級制度を廃止し、1本の賃率を適用することになり、原価に基づく運賃の適用を図ることとなった。鉄道貨物の輸送量が年々減少するなかで、1987年4月に国鉄は分割・民営化され、国鉄の貨物部門は日本貨物鉄道(JR貨物)に引き継がれた。JR貨物の運賃はコンテナ単位(5トンまで積載)で決められ、また割引など弾力的な適用がなされている。

[雨宮義直・堀 雅通]

『廣岡治哉編著『現代交通の理論と政策』(1975・日本評論社)』『廣岡治哉・雨宮義直編『現代の交通経済』(1977・有斐閣)』『中西健一・平井都士夫編『新版 交通概論』(1982・有斐閣)』『日本交通学会編『交通経済ハンドブック』(2011・白桃書房)』

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