日本大百科全書(ニッポニカ) 「月の巻」の意味・わかりやすい解説
月の巻
つきのまき
長唄(ながうた)の曲名。本名題(ほんなだい)「月雪花蒔絵(つきゆきはなまきえ)の巵(さかずき)」。1827年(文政10)3月江戸・市村座初演。月・雪・花=三段返しの所作事の第一段で、それぞれ長唄、清元(きよもと)、長唄でつくられ、月と雪のみ現存。2世桜田治助作詞、4世杵屋(きねや)六三郎作曲。月の名所として名高い近江(おうみ)の野路(のじ)の玉川を背景に、仕丁2人と御殿女中が踊る趣向。曲の構成は、本調子で置唄、セリの合方、くどきがあり、二上りで踊り地、ちらし、段切(踊り地)となる。唄の音域は全体的に高い。当時流行の鹿島(かしま)踊を仕丁の踊りにも取り入れ、化政(かせい)期(1804~30)の世相を表した作品。
[茂手木潔子]