仕丁(読み)ジチョウ

デジタル大辞泉 「仕丁」の意味・読み・例文・類語

じ‐ちょう〔‐チヤウ〕【仕丁】

《「しちょう」とも》
律令制で、成年男子に課せられた力役りきやく。50戸ごとに二人が割り当てられ、3年交替で諸官庁労役に服させた。してい。つかえのよぼろ。
平安時代以降、貴族の家などで、雑役に従事した下男

し‐ちょう〔‐チヤウ〕【仕丁】

じちょう(仕丁)

し‐てい【仕丁】

じちょう(仕丁)

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精選版 日本国語大辞典 「仕丁」の意味・読み・例文・類語

じ‐ちょう‥チャウ【仕丁】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「しちょう」とも )
  2. 令制で、公民の成年男子に課せられた力役(りきやく)。また、その人。諸国から五〇戸に二人の割合で、正丁を京にのぼらせ、官司に分配して三年間労役に服させた。二人のうち実働する者を立丁(りってい)(=直丁・駆使丁)といい、他の一人は立丁のために生活の世話をし、廝丁(しちょう)といわれる。女性に課せられた場合は女丁(にょてい・じょちょう)といわれるが、その数は少なかった。じてい。つかえのよぼろ。〔令義解(718)〕
    1. [初出の実例]「内のそこらの殿上人・上達部・あやしの衛士・仕丁にいたるまで」(出典:栄花物語(1028‐92頃)花山たづぬる中納言)
  3. 寺社、貴族などに与えられた封戸(ふご)に課せられる力役。また、その人。封戸から一定の割合で雑役に従事する人夫を差出すか、あるいはその代わりに米銭を上納する。封丁(ふうてい)。じてい。
    1. [初出の実例]「仕丁八人。養米石」(出典:東南院文書‐(年月日未詳)(正暦四年(993)以降)・東大寺封物進未勘注案)
  4. 令制で、地方官に給された事力(じりき)のこと。特に大宰府官人に与えられた事力を仕丁と称することがある。じてい。
  5. 平安時代以降、宮中・貴族の家や寺社などで、雑役に使われた下男。雑役に従う人夫。下僕。じてい。
    1. [初出の実例]「しんでんのひがくしの間に棚をして、小桶に小𣏐しておかれたれば、仕丁つとめてごとに湯をもてまゐりていれければ」(出典:大鏡(12C前)二)
    2. 「女の方より『仕丁やある、ひとり』など言ひおこせたるこそ、ありがたくうれしけれ」(出典:徒然草(1331頃)三六)
  6. 江戸時代、特に御台所(みだいどころ)で、御輿舁(みこしかき)その他諸事の使役に供する者。じてい。〔吏徴(1845)〕
  7. 神事や祭などで、物を持ち運んだり雑役に従事したりする者。
    1. [初出の実例]「烏帽子白丁姿にて、白布の袋に納めた長柄の褄折傘を担いだ仕丁(シチャウ)一名が」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉八月暦)

し‐ちょう‥チャウ【仕丁】

  1. 〘 名詞 〙じちょう(仕丁)

し‐てい【仕丁】

  1. 〘 名詞 〙じちょう(仕丁)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仕丁」の意味・わかりやすい解説

仕丁
しちょう

「じちょう」ともいう。古代に行われた徭役(ようえき)制度の一つ。養老令(ようろうりょう)によると、仕丁は50戸ごとに2人が点ぜられ、中央官衙(かんが)で雑役に従ったが、1人は廝丁(かしわで)として炊事を担当した。仕丁には官粮(かんろう)が支給され、また労役の代償として租税のうち調・庸・雑徭(ぞうよう)が免除された。仕丁制の起源は大化前代にまでさかのぼり、30戸を単位として2人が点ぜられていたのが、大化改新の際に50戸を単位として点ぜられることになった。その際、仕丁を養うために各戸から布と米を徴収し、これを庸とよんだ。この仕丁の庸は、歳役(さいえき)に従事するかわりに庸を出す制度が成立すると、これに吸収された。しかし718年(養老2)4月に至って、仕丁を出した戸が銭や綿を出す養物(ようぶつ)の制度として復活した。

[長山泰孝]

『彌永貞三著『日本古代社会経済史研究』(1980・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「仕丁」の意味・わかりやすい解説

仕丁 (しちょう)

日本古代,中央官司の雑役にあてられた人民。〈つかえのよぼろ〉ともいう。大化改新以前から存在したが,646年(大化2)の改新の詔で,それまで30戸から2丁を徴発していたのを改め,50戸(1里)から2丁をとる制となり,大宝・養老令制に継承された。令制では,直接労役にあたる仕丁(立丁)と,食事等の世話を行う廝丁とが同郷(里)から徴発されたが,8世紀中ごろ以降,両者は区別なく労役に服するようになった。正丁(21歳以上60歳以下の男子)からとられる仕丁のほか,人数は少ないが同年齢の女丁も役された。仕丁には課役が免除され,出仕した日には米,塩が支給された。服務の期限は,722年(養老6)の格(きやく)で3年と定められ,養老令にも規定されたが,現実には長期にわたり留役された。718年には養物の制が定められ,仕丁を出した房戸の雑徭を免除し,かわりに仕丁を資養するための養物を送らせた。9世紀には仕丁の資養のための副丁(養丁)の制も行われたが,一方で日功銭を代納することによって実役を免れることが一般化し,制度としては空洞化していった。
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百科事典マイペディア 「仕丁」の意味・わかりやすい解説

仕丁【しちょう】

日本古代の徭役(ようえき)の一種。〈してい〉〈つかえのよぼろ〉とも読む。大和朝廷時代には服従した地方から徭役労働者を朝廷に徴用していたが,大化改新後の律令制では,1里50戸につき2人,中央官庁や封戸(ふこ)の主家に3年交代で雑役夫として勤務,経費は地元負担と決めた。2人はそれぞれ立丁(りっちょう)・厮丁(しちょう)と呼ばれ,立丁は直接労役にあたり,厮丁は食事当番であったが,奈良中期から区別がなくなり,厮丁は廃止され,平安時代には仕丁の役も銭納となり,実役を免れることが一般化した。公家や社寺では江戸時代まで名目的に残り,輿舁(こしかき)などの雑用を務め,明治初年にも官庁の雑役夫を仕丁と呼んだ。
→関連項目租庸調

仕丁【してい】

仕丁(しちょう)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「仕丁」の解説

仕丁
しちょう

「つかえのよほろ」とも。律令制の労役の一つ。令制では,50戸(里(り))ごとに成年男子2人を徴発して中央官司の雑役にあたらせた。実役に従事する立丁(りってい)と,立丁の食事などの世話をする廝丁(しちょう)の2人1組。少数だが女性を徴発する女丁(仕女)もあった。大宝令には期間の規定はなかったが,のち3年交替と定められて養老令にも規定された。仕丁の生活費は郷土の負担で,718年(養老2)に仕丁を出した房戸の雑徭(ぞうよう)を免じて資養にあてることとし,平安時代には副丁の制ができた。なお8世紀中葉以降,立丁と廝丁は区別なく実役に従事するようになった。改新の詔(みことのり)に,30戸から2人を出させていたのを50戸ごとに2人と改め,50戸から仕丁の資養にあてるため庸布・庸米を徴することがみえる。仕丁制は大化前代に起源をもち,ベ―トモの部の構造を継承する日本独自の制度であると考えられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仕丁」の意味・わかりやすい解説

仕丁
しちょう

奈良時代の力役。大化前代から存在した。令制では,1里 (50戸) ごとに正丁 2人を徴集した。1人を立丁,もう1人を廝丁 (しちょう) といい,廝丁は立丁の炊事などの役をつとめた。彼らの生活費は差出した里でまかなった。期間は3年で,在京の諸司などに配置され,造営事業の労力源となった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「仕丁」の解説

仕丁
しちょう

律令制における労役の一つ
1里(50戸)に正丁2人の割で,3年交替に中央官庁の労役に従事した。奈良時代の諸造営事業の重要な労働力であった。費用はその里の共同負担で,実際は相当長期間にわたったので逃亡する者もあった。

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世界大百科事典(旧版)内の仕丁の言及

【直丁】より

…日本古代の律令制下において50戸ごとに2人ずつ徴発された仕丁(しちよう)のうち,中央諸官司の雑役に服する役にあたったものをいう。野外での労役に服する駆使丁(くしちよう)と区別され,神祇・太政二官をはじめ,中央の諸省および諸職(しき)・寮・司や,弾正台などの独立官司,東宮坊以下の諸官司に配置されて,それぞれ定数があった。…

【退紅】より

…薄紅色に染めた麻布製,単(ひとえ)仕立て。烏帽子をかぶり黒染麻布のくくり袴をはき退紅を着た仕丁のことも指す。傘持,履持(くつもち)など公家の供をする召具(めしぐ)の装束の一つ。…

【夫役】より

…律令政府は20~60歳までの男子を正丁(しようてい)とし,庸(10日間にわたる中央官衙(かんが)での無償労役で,布での代納が認められていた)を課し,国司の監督下に1年に60日間の公共事業に従事させることもあった。衛士(えじ),防人(さきもり)などの軍夫,1郷から2名が中央官衙に呼びよせられて労働に従事させられる仕丁(しちよう),調などを諸国から中央に輸送する運脚(うんきやく)などもあった。〈軍事と造作〉は,律令制下の農民にとって重い負担であった。…

【徭役】より

…身体障害者(残疾)や父母の喪中の人に対して徭役を免除するという律令の規定も,実役を免除することに主眼があったと考えられる。なお徭役という言葉は,いわゆる徭役労働一般の意味でも用いられており,古代では,歳役や雑徭のほかに,地方の里から交替に2人ずつ中央に徴発されて雑役に従事する仕丁や,功食は支給されるが官によって強制的に雇傭される雇役(こえき)などがあり,兵士も実際には徭役の一種と観念されていた。広義の徭役労働は,古代だけでなく中世・近世にも存在していたが,古代では賦役(広義の税)のなかで,徭役労働の占める比重が高かったと考えられる。…

※「仕丁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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