「じちょう」ともいう。古代に行われた徭役(ようえき)制度の一つ。養老令(ようろうりょう)によると、仕丁は50戸ごとに2人が点ぜられ、中央官衙(かんが)で雑役に従ったが、1人は廝丁(かしわで)として炊事を担当した。仕丁には官粮(かんろう)が支給され、また労役の代償として租税のうち調・庸・雑徭(ぞうよう)が免除された。仕丁制の起源は大化前代にまでさかのぼり、30戸を単位として2人が点ぜられていたのが、大化改新の際に50戸を単位として点ぜられることになった。その際、仕丁を養うために各戸から布と米を徴収し、これを庸とよんだ。この仕丁の庸は、歳役(さいえき)に従事するかわりに庸を出す制度が成立すると、これに吸収された。しかし718年(養老2)4月に至って、仕丁を出した戸が銭や綿を出す養物(ようぶつ)の制度として復活した。
[長山泰孝]
『彌永貞三著『日本古代社会経済史研究』(1980・岩波書店)』
日本古代,中央官司の雑役にあてられた人民。〈つかえのよぼろ〉ともいう。大化改新以前から存在したが,646年(大化2)の改新の詔で,それまで30戸から2丁を徴発していたのを改め,50戸(1里)から2丁をとる制となり,大宝・養老令制に継承された。令制では,直接労役にあたる仕丁(立丁)と,食事等の世話を行う廝丁とが同郷(里)から徴発されたが,8世紀中ごろ以降,両者は区別なく労役に服するようになった。正丁(21歳以上60歳以下の男子)からとられる仕丁のほか,人数は少ないが同年齢の女丁も役された。仕丁には課役が免除され,出仕した日には米,塩が支給された。服務の期限は,722年(養老6)の格(きやく)で3年と定められ,養老令にも規定されたが,現実には長期にわたり留役された。718年には養物の制が定められ,仕丁を出した房戸の雑徭を免除し,かわりに仕丁を資養するための養物を送らせた。9世紀には仕丁の資養のための副丁(養丁)の制も行われたが,一方で日功銭を代納することによって実役を免れることが一般化し,制度としては空洞化していった。
執筆者:笹山 晴生
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「つかえのよほろ」とも。律令制の労役の一つ。令制では,50戸(里(り))ごとに成年男子2人を徴発して中央官司の雑役にあたらせた。実役に従事する立丁(りってい)と,立丁の食事などの世話をする廝丁(しちょう)の2人1組。少数だが女性を徴発する女丁(仕女)もあった。大宝令には期間の規定はなかったが,のち3年交替と定められて養老令にも規定された。仕丁の生活費は郷土の負担で,718年(養老2)に仕丁を出した房戸の雑徭(ぞうよう)を免じて資養にあてることとし,平安時代には副丁の制ができた。なお8世紀中葉以降,立丁と廝丁は区別なく実役に従事するようになった。改新の詔(みことのり)に,30戸から2人を出させていたのを50戸ごとに2人と改め,50戸から仕丁の資養にあてるため庸布・庸米を徴することがみえる。仕丁制は大化前代に起源をもち,ベ―トモの部の構造を継承する日本独自の制度であると考えられる。
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…日本古代の律令制下において50戸ごとに2人ずつ徴発された仕丁(しちよう)のうち,中央諸官司の雑役に服する役にあたったものをいう。野外での労役に服する駆使丁(くしちよう)と区別され,神祇・太政二官をはじめ,中央の諸省および諸職(しき)・寮・司や,弾正台などの独立官司,東宮坊以下の諸官司に配置されて,それぞれ定数があった。…
…薄紅色に染めた麻布製,単(ひとえ)仕立て。烏帽子をかぶり黒染麻布のくくり袴をはき退紅を着た仕丁のことも指す。傘持,履持(くつもち)など公家の供をする召具(めしぐ)の装束の一つ。…
…律令政府は20~60歳までの男子を正丁(しようてい)とし,庸(10日間にわたる中央官衙(かんが)での無償労役で,布での代納が認められていた)を課し,国司の監督下に1年に60日間の公共事業に従事させることもあった。衛士(えじ),防人(さきもり)などの軍夫,1郷から2名が中央官衙に呼びよせられて労働に従事させられる仕丁(しちよう),調などを諸国から中央に輸送する運脚(うんきやく)などもあった。〈軍事と造作〉は,律令制下の農民にとって重い負担であった。…
…身体障害者(残疾)や父母の喪中の人に対して徭役を免除するという律令の規定も,実役を免除することに主眼があったと考えられる。なお徭役という言葉は,いわゆる徭役労働一般の意味でも用いられており,古代では,歳役や雑徭のほかに,地方の里から交替に2人ずつ中央に徴発されて雑役に従事する仕丁や,功食は支給されるが官によって強制的に雇傭される雇役(こえき)などがあり,兵士も実際には徭役の一種と観念されていた。広義の徭役労働は,古代だけでなく中世・近世にも存在していたが,古代では賦役(広義の税)のなかで,徭役労働の占める比重が高かったと考えられる。…
※「仕丁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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