改訂新版 世界大百科事典 「有角石器」の意味・わかりやすい解説
有角石器 (ゆうかくせっき)
東日本のみに分布する弥生時代の武器形石製品の一種で,これまでに約50余例が出土している。そのほとんどが発掘調査によらない採集品であったことから,縄文時代の特殊な遺物と考えられたこともあったが,最近では竪穴住居内など,集落からの出土品が増え,同時代の日常生活用具と同類の扱いをうけていたことがわかった。その形は,扇状に広がった斧様の刃部両端に,角状の突起をもち,基部は棒状の柄となり,全長11cm余から19cm余までのものがあり,石材にはセン緑岩を用いたものが多い。形態上,いくつかに分類しうるが,弥生時代中期後半から後期にかけての限られた時期のものである。その用途は,以前には大陸の有角斧に原型を求め,斧などの工具や鋤として使用したと考えられたが,今では,東日本を代表する石製の戈形儀器または祭器として,剣形と同様に,集落内での戦闘儀礼に使用されたと考えられている。
執筆者:工楽 善通
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報