木製祭器(読み)もくせいさいき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木製祭器」の意味・わかりやすい解説

木製祭器
もくせいさいき

遺跡出土の木製品には,農工具や容器等の実用品とは明らかに区別される特殊なものが含まれ,祭祀遺物と推定され,木製祭器と総称している。弥生時代の例では,大阪府池上遺跡の男根形・鳥形,滋賀県大中の湖遺跡の木偶,山口県宮ケ久保遺跡の武器形・鐸 (たく) 形・動物形等がある。鳥形は集落の入口に立てる魔よけ,武器形は生業豊凶を占う模擬戦に使用されたと民族例から推定されており,その他も農耕儀礼にかかわると見られている。古墳時代には木製葬具の充実が見られ,古墳時代初頭ころの奈良県纒向石塚では,周溝内より朱塗鶏形・弧文円板が出土している。最近注目されたものでは,奈良県橿原市の四条古墳 (5世紀後半ころの造出しつき方墳) ,天理市の小墓古墳 (6世紀前半ころの前方後円墳) の周溝から出土した多量の木製葬具類があり,盾形,笠形,鳥形,翳形,弓形,剣形,矛形,机形,槽形,耳杯形などさまざまな種類がある。これらは埴輪と同様に墳丘上や周溝に立てたり並べたりしたと考えられており,従来の古墳景観や葬送儀礼への認識を一変させた。こうした木製祭器は古墳以外の祭祀遺跡でも見つかる例がある。当時の来世観や儀礼を考える上で興味深い事例である。

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