日本大百科全書(ニッポニカ) 「未完成交響楽」の意味・わかりやすい解説
未完成交響楽
みかんせいこうきょうがく
Leise flehen meine Lieder
ドイツ・オーストリア合作映画。1933年製作。人気俳優だったウィリ・フォルストの初監督作。実在した作曲家の生涯の一幕を、史実にとらわれることなく物語化した「楽聖映画」の代表作。フランツ・シューベルトの交響曲が「未完成」となった経緯を悲恋物語に仕立て、ウィーン・フィルやウィーン少年合唱団の演奏にのせて叙情的に描く。
夜会でピアノを弾くシューベルト（ハンス・ヤーライHans Jaray、1906―1990）は、一人の若い女性の笑い声に気分を害して退席したことが仇(あだ)となり、職を失ってしまう。やがてピアノ教師として赴いたハンガリーの伯爵家で女性と再会。彼女は伯爵の娘カロリーネ（マルタ・エッゲルトMartha Eggerth、1912―2013）だった。誤解の解けた二人は恋に落ちるが、伯爵にその仲を引き裂かれる。彼女の結婚式でシューベルトは作曲中の曲を披露するが、その恋が成就しなかったように、その曲も完成することはないだろう。カロリーネ役のエッゲルトの歌声も印象的なこの作品は、その豊かな情感によって日本でも多くの観客を魅了した。
［濱田尚孝］
『『東和商事合資會社社史――1928年～1940年』（1942・東和商事合資會社）』▽『クルト・リース著、平井正他訳『ドイツ映画の偉大な時代――ただひとたびの』（1981・フィルムアート社）』▽『瀬川裕司著『映画都市ウィーンの光芒――オーストリア映画全史』（2003・青土社）』
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