国指定史跡ガイド 「東大寺東南院旧境内」の解説
とうだいじとうなんいんきゅうけいだい【東大寺東南院旧境内】
奈良県奈良市雑司町にある東大寺の子院跡。東大寺南大門の東にあり、敷地内に現在の東大寺本坊がある。元弘の乱の際、後醍醐(ごだいご)天皇が潜幸した所でもあり、1934年(昭和9)に国の史跡に指定された。東南院は、875年(貞観17)に聖宝(しょうぼう)が建立した薬師堂を発端とし、904年(延喜4)に東大寺別当道義律師が大安寺東北の佐伯院(香積寺)を薬師堂のあたりに移して東南院と号し、その後、道義律師は初代の院主に聖宝を招いて三論宗・真言宗の東大寺における本所とした。発掘調査は東大寺旧境内にあたる南大門東南の三社で行われ、平安時代にさかのぼる池が確認されている。これは室町時代の聖法親王が院務をしていると、池面に三社宣託が顕現したという東南院の三社池に相当するものと考えられている。池の最終堆積層からは、1578年(天正6)の興福寺僧に対する追善供養の塔婆が出土したことから、戦国時代末期の東大寺と興福寺の関係を探る資料とされる。近畿日本鉄道奈良線近鉄奈良駅から奈良交通バス「大仏殿春日大社前」下車、徒歩約5分。