日本歴史地名大系 「松岡郡鑑」の解説
松岡郡鑑
まつおかこおりかがみ
三冊
別称 東郡鑑 久方蘭渓編
成立 宝暦一三年
分類 政治
解説 水戸藩領松岡郡の郡奉行久方蘭渓が、領内支配の必要から、村役人に村の様子を書出させ、一書にまとめたもの。本書成立当時、水戸藩領は四郡制をとり、その一つを松岡郡と称した。四郡は享和二年の郡制改革により一一郡となり、松岡郡は石神・小菅・安良川の三郡となった。この時本書は三冊に分けられ、それぞれの郡庁に保管されたという。伝存の判明しているのは高萩市下手綱の高橋融氏蔵の「安良川組鑑」と題した一冊のみ。「安良川組鑑」が「松岡郡鑑」の一冊であることは「新編常陸国誌」が「松岡郡鑑」を引用した記事が「安良川組鑑」所載のものと同文であるところから推定できる。定書・条々・指銭改様申合之事・小割付改様之事などの農民支配の要諦を冒頭に記し、次に各村ごとに城下までの距離・村役人名・村高・年貢・用水・御立山・分付山・人数・牛馬数・産物・社寺・名所・古跡などを記す。本書は支配下村々の様子を把握することがねらいであったから、成立時点の宝暦一三年以降も書加えられ、最も新しい記事は享和三年である。村明細帳を欠く水戸藩にとって、高萩地方の限られた範囲ではあるが近世の村の様子を知りうる基本史料である。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報