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石神 いしがみ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

石神
いしがみ

「しゃくじん」ともいう。奇石,霊石を神体とする神。古くはチカエシノオオカミ,クナドノカミなどがあり,また民間信仰に多くみられ,病気治療や安産に霊験があるとされる。

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デジタル大辞泉の解説

いし‐がみ【石神】

奇石・霊石などを神体または神の依代(よりしろ)として祭った民間信仰の神。しゃくじん。しゃくじ。
[補説]狂言の曲名別項。→石神

いしがみ【石神】[狂言]

狂言。に離縁されそうになった男が、仲人入れ知恵石神に化けて妻にくじを引かせ、いったん別れることをあきらめさせるが、結局は見破られる。

しゃく‐じん【石神】

いしがみ」に同じ。

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百科事典マイペディアの解説

石神【いしがみ】

神霊が降臨する石(磐座・磐境(いわくら・いわさか))や,超自然力をもつという石の信仰は古く,自然石を神体とする神社は多い。また陽物に類する石を〈しゃくじん〉〈さごし〉などと呼び,安産,性病の治癒,雨乞(あまごい)などを祈願する例も各地にみられる。

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世界大百科事典 第2版の解説

いしがみ【石神】

狂言の曲名。女狂言。家を顧みず遊んでいる夫に愛想をつかして妻は離婚を申し出る。夫は仲人のところへ行き,妻が来たら仲裁してくれとたのむ。仲人は,やがて訪ねてきた妻に,出雲路の夜叉神(やしやじん)(石神)に伺いを立ててみよと勧めておき,夫には夜叉神の扮装をさせて行かせる。妻は夜叉神に,離別の祈誓を立てに参詣するが,夜叉神に化けている夫は巧みに妻をだまし,離縁を思いとどまらせる。しかたなく夫に添い続けることに決めた妻が,神への礼に神楽を舞いはじめると,夫はつい浮かれて舞い出してしまい,見破られて追い込まれる。

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大辞林 第三版の解説

いしがみ【石神】

色・形などに特徴のある石を、神の依り代や神体として祀まつったもの。しゃくじん。しゃくじ。

いしがみ【石神】

狂言の一。妻に離縁話をもち出された夫が石神になりすまして、伺いを立てにきた妻の心を変えさせるが、やがて見破られてしまう。

しゃくじん【石神】

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日本の地名がわかる事典の解説

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

石神
いしがみ

ある種の自然石や人工を加えた石棒・玉石(たまいし)などに宿る神霊に対する信仰。石神(しゃくじん)ともいう。原始土俗宗教の一種であり、世界各地にみられる。
 石を神として尊信するわが国古来の風習は、その一部を海・水の霊威に託し、波濤(はとう)の底から浜辺に打ち寄せる奇石を、威霊の呪力(じゅりょく)によると考えた。沖縄県では、大昔、大空を飛来し(多良間(たらま)神に祀(まつ)る)、風に乗って常世国(とこよのくに)から漂着した神の石(仙神という)や、土中・砂中から現れ出た石(安里(あり)神に祀る)などを、それぞれ護国・厄除(やくよ)け・授福の神として、その霊力・呪力を信じ、祀り仕えている。また、馬・海鳥などの石になった神体も多い。井戸べりに祀られる石神はつねに異形の鍾乳石(しょうにゅうせき)であり、家の神でもある火・雷の神は3個の石で象徴され、一列の状態か鼎(かなえ)足形に据えられている。[石上 堅]

石神の霊力

『出雲国風土記(いずものくにふどき)』楯縫(たてぬい)郡神名樋(かんなび)山の条には、この山の西に石神と小石神が100余もあり、古老の伝えに「天御梶日女命(あめのみかじひめのみこと)、多久(たく)の村に来まして、多伎都比古(たきつひこ)命を産み給(たま)ひき。その時、教(さと)し詔(みことの)り給はく、汝(な)が命の御社の向位(むき)は此処(ここ)に坐(まさ)むと欲(おぼ)すぞ宜(え)き、と詔り給ひき。いはゆる石神はこれ多伎都比古の御魂(みたま)なり。旱(ひでり)に当りて雨を乞(こ)ふ時は、かならず零(ふ)らしめ給ふ」とある。『日本書紀』垂仁(すいにん)紀にも、任那(みまな)の村で祀る神は白石(『古事記』では赤玉)で、美しい童女となり、うまい食事をつくる。日本に渡来して比売語曽(ひめこそ)社の祭神になったと伝える。
 神あってこの世に降(くだ)る縁(えにし)の石を、足跡石、休み石、降臨石、神向(こうご)石、神像(かみがた)石などとよび崇(あが)める。古歌に類歌の多い「渚(なぎさ)に拾ふ玉」も、常世魂の成長につれて体内に宿り込む魂の象徴である小石・貝などをいう。正月などの若水汲(く)みの際に、黒石・白石を川・海・井戸などから手桶(ておけ)の底に沈め迎えて、歳神(としがみ)の神体(歳玉石)とし、これを出産時にウブタテ飯(めし)の頂や膳(ぜん)の上に迎える習俗がある。これは、産石(うぶいし)、すなわち一つ一つの石に対する石生誕系統の信仰で、このほか各地に石成長・石分身系統の信仰も生じ、熊野・伊勢(いせ)の信仰者が盛んに喧伝(けんでん)した。人々は個々の形・色・紋様などから神秘を感得し、石を通して神をみ、石の中に霊力が宿ると信じた。
 石の上に立って足踏みをし、「魂よばい」をする魂覓(たまま)ぎ・魂招(たまお)ぎの呪術女神が玉依姫(たまよりひめ)であるが、『出石(いずし)物語』では、御祖(みおや)神が、玉依姫の資格に取り扱われている。御祖神(母神)が伊豆志(いずし)河の石を塩で和(あ)えて、竹皮に包んで呪(のろ)うのは、霊魂とみなした石に呪いをかけると、目的の霊魂・肉体がその影響を受けると信じたのである。
 たとえば、家の礎石をフセ石、ジブク石とよび、土台の下になるものを敷石、柱の下になるものを築石(つくいし)というが、これらに青石を用いないのは、青石には神秘力が期待されないせいである。また、屋根の重しにのせる石をオセイシ、ヤオモなどといい、神石の扱いをし、この石が落ちると不吉の兆しとするのは火事を忌むことに発し、その場合にはすぐに水をかけるか、女の腰巻にくるんで持って上がれば火の祟(たた)りがないという。この石の支えの横木が石持(いしもち)・ヤアラなどである。
 長寿・豊饒(ほうじょう)・情愛の常世国からの霊魂の象徴とする白石を、オシロイ石・米石(こめいし)などと名づけて忌む。白石を屋根石に用いると子が夜泣きすると伝え、赤石(カジ石)を拾って戻ると火事・雷・赤鬼・天狗(てんぐ)などの災いにあい、母親の乳が腫(は)れる(高知県)と戒める。こうした石は、通例、神の石であり、その清浄なるがゆえに忌まれた。白石は白馬、白竜、白蛇、白鳥の変身とも説かれ、あるいは白旗、白米を取り合わせて、その白さが印象づけられる。[石上 堅]

石神の祭祀

トラ、トウロ、トラニ、トオル、サヤ、サヨ、小町、式部などと名づけられた石神奉仕役の比丘尼(びくに)・巫女(みこ)が石になると、イタコ石・守り石・ミコ石・姥(うば)石、または化粧(けわい)石・鉄漿付(かねつけ)石・紅付(べにつけ)石とよばれる。トラなどの名称は道・仏両教に属さぬ一派の巫女・行者を意味した呼称で、記紀の息長帯比売(おきながたらしひめ)(神功(じんぐう)皇后)の名にもあるタラシ、タルの変化したものである。これらの石が祭壇であることは、石の上に物を置くと失(う)せるという伝承が如実に示している。
 いわゆる口承文芸の「カチカチ山型譚(たん)」では、石に餅(もち)・糊(のり)などを塗り付けて、悪口を浴びせる猿・狸(たぬき)・狼(おおかみ)をとらえているが、これは、人々の生活を損なう害獣を防ぐために、田畑の平石(ひらいし)の上で祭祀(さいし)を行ったものと推測される。さらに、水霊・火霊の宿る石の物語・信仰を、鍛冶(かじ)・鋳物師(いもじ)らいわゆる職人が継承し、それらの石は神社・祠(ほこら)の神体とされ、石そのものの霊威も説かれ、信じられた。
 神体が石であるので「石神」と書き、シャクジン・シャモジ・シャグジ・ゾウズなどとよぶ。これらの神を総括し、「社宮司」と書いて、新来(今来(いまき))の神を奉ずるような行為には、その土地の先住神―代表神信仰のおもかげも残る。また、物をつぶし、突く用途に用いた石棒・飯杓子(めしじゃくし)信仰と習合して、石神は子供の咳(せき)患い、女の縁結び、子孕(こはらみ)祈願の対象ともなった。
 天石戸別神(あまのいわとわけのかみ)である門神(豊石窓(とよいわまど)神・櫛(くし)石窓神)が、その土地の精霊神として祠に祀られている例もある。『延喜式(えんぎしき)』神名帳では石神社をイワガミシャ、イシガミシャ、または佐久(さく)神ともいうが、これが道祖神・竈(かまど)神・姥(うば)神・子(ね)の神・荒神(庚申(こうしん))、山神(手向(たむけ)・峠・道・氏の神―祖神)に転じ、のちに中山神(天一神)などになる。しかし石神は、塞神(さえのかみ)(『延喜式』にいう、障神(しょうじ)・スクジ・ソコジ―守公神)であり、いわゆる境界の神でもある。『出雲国風土記』加賀神崎の条に、ミサキの神とサダ神(開拓神、栄田の義)生誕の説話がある。枳佐加比売(きさかひめ)は、水に流れてくるもの(矢)を選び、埼(みさき)の神に矢を捧(ささ)げ、矢を体にあてがい、体内の汚穢(おえ)を去らしめたのちに、足踏みをして地霊を圧し鎮め、願いを叫び上げた。やがて祈りがかない、比売は窟(いわや)の中で男神を生んだ。そのため、この埼・窟のあたりを舟行するときには、神に祈念せねば強風が吹き募り、かならず舟は沈むと伝える。つまり地境の神である。それがさまざまによばれ、地鎮・地主・防圧(災厄を防ぎ止める)の神となり、杜(もり)・ムロ・フロとよぶ盛り土・樹木群、あるいは神向石(カワゴ・ゴーリン石)の孤石や群落する小石の密集地域を、石神として尊崇するに至る。神の世と人の世との境目の、一時的な神の宿り所が天(あめ)の磐座(いわくら)であるが、これは石・岩群・樹群でもあり、石神でもあった。
 俗にいう道祖神は、記紀によると、伊弉諾(いざなぎ)・伊弉冉(いざなみ)の二神が夫婦別れをする際、両者の間に置いた杖(つえ)―岐神(くなどのかみ)であるという。クナが諾冉(だくぜん)両神に和合法を教えた鶺鴒(せきれい)(ニワクナブリ)のクナ(男根)であり、このクナなる石神(その象徴的石像、また男女神が肩を組み、あいた手に徳利・杯などを持ついわゆるウナガケル神)に、主として農耕にかかわる生産力・労働力の向上を念じた。また死の国から追いかけてくる伊弉冉や女軍を防ぎ止めるために、伊弉諾は道いっぱいに千引石(ちびきいし)を据えたが、これは道ふさぎの神であって、石神ながら境神とは別神とすべきである。[石上 堅]

外国の石神

ニューギニアでは、石に宿る霊力をウァロポとよび、石が年を経るにしたがい、超人間的呪力をもつと信じられている。それに物質としての呪力ソイミが加わると、集団の平和・食糧・成功・健康などを自由になしうるとする。村の首長が石を守り、儀礼を行い、香を捧げ、祓(はらえ)をする。この石によって雨と子孫に恵まれ、動植物の繁殖がもたらされる。また、中央オーストラリア北部では、祖先は、砂地から現れる大小の青石であると信じられている。[石上 堅]
『石上堅著『新古代研究』全3巻(1978・雪華社) ▽石上堅著『生と死の民俗』(1981・桜楓社) ▽石上堅著『日本民俗語大辞典』(1984・桜楓社)』

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世界大百科事典内の石神の言及

【石棒】より

…中期の大型石棒は住居の内部に立ててあることが多く,呪術的な意味をもっていたようである。後世,これを石神(いしがみ)として祭るのは,性器を連想してのことであるが,縄文時代にも類似の観念があったかもしれない。後期の石棒は手にもてる大きさに縮小しているから,儀礼的なものであろう。…

※「石神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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