楊絳(読み)ようこう

百科事典マイペディア 「楊絳」の意味・わかりやすい解説

楊絳【ようこう】

中国の作家,文学者。江蘇省無錫の出身。北京上海などを経て,蘇州の東呉大学を卒業後,清華大学研究院(外国文学専攻)に進む。35年同郷の銭鍾書と結婚,38年まで英仏に滞在,帰国後,上海で英語・英文学を教え,解放後は,北京の清華大学へ移り,53年以降は中国社会科学院外国文学研究所に属した。専攻は英,仏,スペインの文学,特に小説論,また中国文学についても論考がある。解放前に短篇小説,散文,喜劇台本などがある。文革期の一家への迫害と知識人の強制労働改造経験を,ユーモアアイロニーをたたえた静謐な散文で描いた《幹校六記》(1981年,日本語訳みすず書房)で内外で高い評価を得,以後,散文,小説,評論などを次々発表。短篇小説集に《倒影集》,評論散文集に《春泥集》《回憶両篇》《記銭鍾書与囲城》《将飲茶》(日本語訳《お茶をどうぞ》平凡社)《洗澡》など。現代中国で最も敬愛される女性作家で,一家の回想記《私たち三人》はベストセラーとなった。翻訳には,《ラサリーリョ・デ・トルメス》《ジル・プラース》,《ドン・キホーテ》がある。

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