銭鍾書(読み)せんしょうしょ

百科事典マイペディア 「銭鍾書」の意味・わかりやすい解説

銭鍾書【せんしょうしょ】

中国の文学者,作家,批評家。字は黙存,号は槐聚。青年期に筆名中書君を使う。江蘇省無錫の出身。名家の出で,父は文学者,教育家の銭基博。妻は作家で文学者の楊絳。中学時代から国文英文に抜群の才能を表した。1933年,清華大学外文系を卒業,35年,オックスフォード大学に学び,その後パリ大学でフランス文学を研究。38年,帰国し昆明の西南連合大学などで教授を務め,中央図書館外文部総編纂の職に就く。中華人民共和国成立後は,清華大学教授,中国科学院文学所研究員。文革中,一家は反動分子として迫害を受ける。文革後中国科学院副院長を務めた。西欧的知性教養に加え,中国古典への深い造詣に裏打ちされた,古典研究,小説,批評によって,現代中国最高の知識人,知の巨人と評される。主な著作に,《談芸録》《宋詩選注》(平凡社東洋文庫に収録),小説《囲城》(日本語訳《結婚狂想曲》岩波文庫)など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「銭鍾書」の意味・わかりやすい解説

銭鍾書
せんしょうしょ / チエンチョンシュー
(1910―1998)

中国の作家、批評家。字(あざな)は黙存、号は槐聚(かいしゅ)。江蘇(こうそ/チヤンスー)省無錫(むしゃく/ウーシー)の人。清華大学在学中から『新月』など文芸誌に寄稿。1935年オックスフォードに留学、パリ大学を経て38年帰国。完璧(かんぺき)な中国の古典的教養と、驚嘆すべき西欧風の学識をあわせもつ空前絶後の大才。短編集『人・獣・鬼』(1946)にもその片鱗(へんりん)はうかがえ、長編『囲城(いじょう)』(1947・邦訳名は『結婚狂詩曲』、1988年出版)は第二次大戦中の中国の文化人の戯画で、主知的な作風をよく示す傑作。『談芸録』(1948)、『管錐編(かんすいへん)』(1979)はともに博覧強記自体を批評の方法とする異色の文芸評論集。ほかに中国11~13世紀の詩の研究書『宋(そう)詩選註(ちゅう)』(1958)がある。妻の楊絳(ようこう)も作家、南欧文学者。98年12月、病気のため死去

荒井 健]

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