横座坊物語(読み)よこざぼうものがたり

改訂新版 世界大百科事典 「横座坊物語」の意味・わかりやすい解説

横座坊物語 (よこざぼうものがたり)

室町時代の物語。作者不明。15世紀初中期の成立か。漢文体,1巻。狂言《横座》と同話。明徳の乱に敗れて東山に遁世した年輩の僧が難産の子牛を救い,住家の横座(上座)に置いて横座坊と名づけていつくしんでいたが,狼藉悪太郎に盗まれた。とり返しに行くと,3声喚ぶうちに牛が吼え座ったら返すと難題をかけられ,2度呼んだが牛は答えない。僧は禽獣魚鳥が恩を知る例を縷々(るる)と挙げて説き,最後に〈いかに横座坊〉と喚ばわると牛は綱を引き切り,吼えて悦んだ。悪太郎も発心し,僧,牛とともにさとりを得た。短編の内に和歌21首を含め動物説話や故事を100余り引き,動物伝奇の要約集成版の趣がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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