難産(読み)ナンザン

デジタル大辞泉 「難産」の意味・読み・例文・類語

なん‐ざん【難産】

[名](スル)
出産で、胎児がなかなか生まれないこと。⇔安産
物事がたやすく成立しないこと。「難産の末に法案が成立した」
[類語]産む生み落とす出産分娩お産安産初産ういざん初産しょざん初産はつざん産する身二つになる腹を痛める産卵産み付ける抱卵かえかえ孵化ふか孵卵托卵

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精選版 日本国語大辞典 「難産」の意味・読み・例文・類語

なん‐ざん【難産】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 出産が困難なこと。苦しんで分娩(ぶんべん)すること。⇔安産
    1. [初出の実例]「御乳には前右大将宗盛卿の北方と定られたりしが、去七月に難産(ナンザン)をしてうせ給しかば」(出典:高野本平家(13C前)三)
    2. [その他の文献]〔本草綱目‐服器部・鑿柄木・主治〕
  3. ( 比喩的に ) 物事が容易に成立しないこと。長びいてなかなか埒(らち)の明かないこと。また、大変な苦労曲折ののちに成立すること。
    1. [初出の実例]「実は国有案が此位難産だらうとは思ひませんでナ」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉鉄道国有)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「難産」の意味・わかりやすい解説

難産
なんざん

出産の異常で、一般には安産の対語として使われており、かりに安産を自然分娩(ぶんべん)あるいは正常分娩とするならば、難産は人工分娩あるいは異常分娩に相当するわけである。つまり、分娩の進行が障害されてなんらかの人工的な処置を必要とするような場合をすべて難産とすれば、その原因は主として産道娩出力、胎児に関連した広範囲の異常である。これらは妊婦検診によって予知されるものが多く、出産前に処置されたり対策が講じられるし、分娩経過中に発見された場合でも、設備の整った産院や病院、経験豊富な産婦人科医が付き添う限り、心配はほとんどないといえる。したがって、一般にいわれるほど難産になる例は多くない。しかし、事前に処理または対策の準備ができないような条件ないし状況のもとでは、危険な異常もおこることがある。

[新井正夫]

産道異常による難産

これには骨盤と軟産道の異常が含まれる。骨盤異常による難産の原因は児頭骨盤不均衡であり、骨盤計測で事前に予知される。代表的なものは狭骨盤で、普通の大きさの成熟児の分娩に機械的障害をおこすが、軽度の狭骨盤と正常骨盤との間に明確な区別があるわけではなく、あくまで相対的なものである。すなわち、児に対する通過障害であり、軽度のものは多少の困難はあっても自然分娩が可能であるが、中等度以上の狭骨盤に対しては産科手術、すなわち帝王切開の適応となる。

 軟産道異常による難産の原因としては、高年初産婦にしばしばみられる軟産道強靭(きょうじん)(軟産道が十分に開かない)があり、軟産道損傷(分娩時軟部損傷)をおこしやすい。もっとも多いのは会陰(えいん)裂傷と腟(ちつ)裂傷で、頸管(けいかん)裂傷や子宮破裂は比較的少ないが危険な損傷である。分娩の進行が著しく遅れる場合は帝王切開の適応となる。

[新井正夫]

娩出力異常による難産

代表的なものが微弱陣痛である。すなわち、陣痛の発作時間が短くて弱く、間欠が長くて分娩が進行せず、出産が長引いて2、3日もかかることから母体が極度に疲労し、鉗子(かんし)分娩や吸引分娩を必要とすることもある。しかし、陣痛促進剤を用いて陣痛を増強させるなどの処置を講ずることにより自然分娩の可能な場合が多く、産婦に不安を与えないことが望まれる。

[新井正夫]

胎児因子による難産

前述の児頭骨盤不均衡のほか、在胎43週以上経過した過熟児や、母体の糖尿病による巨大児をはじめ、多胎児、胎位異常(骨盤位など)、胎盤早期剥離(はくり)、前置胎盤などがあげられる。これらも妊婦検診時に胎児情報として予知されるので、それぞれ事前に処置したり準備が整えられる。このほか、出産時における合併症として新生児仮死や新生児分娩損傷などもある。

[新井正夫]

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