日本大百科全書(ニッポニカ) 「橈骨骨折」の意味・わかりやすい解説
橈骨骨折
とうこつこっせつ
前腕骨の一つである橈骨の骨折で、骨体部の単独骨折はまれであり、普通は橈骨遠位部(下部)にみられ、定型的橈骨骨折とよばれる。1814年にアイルランドの外科医コレスAbraham Colles(1773―1843)が初めて記載したことからコレス骨折ともよばれる。転倒して手掌をついたときに発生することが多く、頻度が高い骨折で全骨折の約10%にみられる。おもに骨折線が1本横走し、末梢(まっしょう)骨片が背側に屈曲または背側かつ橈側に転位している場合が多く、これによって手関節は典型的なフォーク状変形を呈する。同時に尺骨茎状突起の骨折を伴うことが多い。
治療は、大半の場合が保存的治療の対象で、通常、整復したのち手関節を掌尺屈位で約5週間固定する。手指の拘縮を予防するため、ギプス固定中に手指の自動および他動運動を早期に積極的に行わせる。骨癒合は一般に良好で、転位が大きい場合に手関節の運動障害を残すこともあるが、日常生活動作に大きな支障をきたすことはまれである。
[永井 隆]