翻訳|radius
四足動物の前肢(上肢)の前腕部,つまりひじから手首までの部分には,一般に2本の棒状の骨が平行して並んでいる。それらのうち母指(第1指)側にある骨を橈骨,他を尺骨という。四肢のすべての長骨についていえることだが,橈骨も祖先の魚類の胸びれの骨格を受け継いだものとして原始両生類に現れて以来,高等哺乳類に至るまで,その配置や全般的性格は本質的にほとんど変わっていない。ただ二次的に水中や地中生活に適応した動物では,橈骨が手首の手根骨と同様の塊状の骨になったり(首長竜,魚竜),極度に太短くなったり(クジラ,モグラ)することがある。また,骨格の退化や融合の傾向が強いカエル類では,後肢の下腿(ひざから足首まで)の2本の骨と同様に,橈骨は発生過程で尺骨と融合し,橈尺骨と呼ばれる1本の骨になる。
ヒトの橈骨についてみると,橈骨頭と呼ばれる上端は短い円柱の形をしており,その上面はややへこんで上腕骨の小頭と関節をつくり,円柱面は尺骨の小さい切れ込みと関節をなし,これらの関節によって橈骨は自分の長軸を軸として回転することができる。これが前腕の回旋(ねじれ運動)として現れるのである。橈骨の中央部は三角柱状で,下に向かうにしたがって太くなり,下端の広い凹面は手根骨と橈骨手根関節をなして手首の運動を可能にし,また下端の内側面は尺骨頭と関節を営む。下端の外側隅は下外側に向かって突出して茎状突起をなしている。
→骨格
執筆者:田隅 本生+藤田 恒夫
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前腕は2本の前腕骨で構成されている。体を直立させて上肢を垂直に垂らし、手掌(手のひら)を前面に向けたとき、前腕の外側(そとがわ)に位置するのが橈骨である。解剖学で上肢を説明するとき、橈骨の並ぶ側をつねに上肢の外側(がいそく)(橈側)とよぶ。前腕を構成する他の1本は尺骨(しゃくこつ)である(この側を尺側とよぶ)。橈骨のほうが尺骨よりも短く、その長さは男性で約22センチメートル、女性で約20センチメートルある。橈骨は、上下の骨端と骨体(骨幹)の3部に分けられ、尺骨とはこの両端で関節をつくる。なお、橈骨の上端(近位端)では、側面が関節環状面となって尺骨と関節をつくる。また、橈骨上端は肥大して橈骨頭とよばれ、上腕骨小頭の部分と関節をつくる。橈骨下端(遠位端)には尺骨、手根骨と関節をつくる関節面がある。橈骨体は、全長にわたって外側に緩く凸彎(とつわん)を示し、3面と3縁(前縁、後縁、骨間縁)の三角柱状を呈している。3縁のうち、骨間縁は内側に向かって鋭い縁(へり)を形成し、尺骨との間に前腕骨間膜が張られている。上腕二頭筋の腱(けん)は橈骨に付着している。
[嶋井和世]
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…表面はいうまでもなく皮膚で包まれている。骨格は原型的な四足動物のそれとほぼ同じで,上腕の中にある上腕骨と前腕の中にある橈骨(とうこつ)および尺骨とからなっている。掌を前に向けると橈骨が外側に,尺骨が内側に互いに平行しているが,掌を後ろに向けると橈骨と尺骨とは交差する。…
…体肢の骨格は,体肢がひれから脚に変わったのにつれて,高等脊椎動物のそれと同一の構成をとるにいたった。すなわち,自由部に上腕(大腿),前腕(下腿),手(足)の3部が区別され,前腕(下腿)には橈骨(とうこつ)(脛骨)と尺骨(腓骨)という2個の骨が並列している。ただしカエル類では,橈骨と尺骨が合体して橈尺骨となり,脛骨と腓骨が合体して脛腓骨となっている。…
※「橈骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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