武経七書(読み)ぶけいしちしょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「武経七書」の意味・わかりやすい解説

武経七書
ぶけいしちしょ

中国の7種の兵法書。春秋時代呉(ご)の将軍孫武(そんぶ)の『孫子(そんし)』、戦国時代魏(ぎ)の将軍呉起(ごき)の『呉子(ごし)』、春秋時代斉(せい)の大司馬(だいしば)田穣苴(でんじょうしょ)の『司馬法』、唐初の将軍李靖(りせい)の『李衛公問対(りえいこうもんたい)』、秦(しん)の国尉(こくい)尉繚(うつりょう)の『尉繚子』、秦の隠者黄石公(こうせきこう)の『三略』、周創業の功臣太公望呂尚(たいこうぼうりょしょう)の『六韜(りくとう)』をさし、略して『七書』ともいう。いずれも宋(そう)代に武官養成のテキストとして選ばれ、武人経典として権威づけられることになった。

[篠田雅雄]

『天野鎮雄他著『新釈漢文大系36 孫子・呉子』(1981・明治書院)』『山井湧訳『全釈漢文大系22 孫子・呉子』(1983・集英社)』『村山孚他著『中国の思想10 孫子・呉子・尉繚子・六韜・三略』(1965・徳間書店)』

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世界大百科事典(旧版)内の武経七書の言及

【兵家】より

…漢初から戦国期の兵法書が整理され,前漢末の任宏(じんこう)が4分類して,政経・国防の総合戦略論の〈兵権謀〉,情勢に即応しうる用兵術の〈兵形勢〉,気象・地理などを測候する〈兵陰陽〉,兵器や武術(スポーツ)をあつかう〈兵技巧〉,計53家790篇,付図43篇を著録した(《漢書》芸文志)。現存の古い兵書は,魏武(曹操)が再編したものが多く,また北宋に編まれた《武経七書》は日本の戦国期に流行した。【戸川 芳郎】。…

【兵書】より

…その後,戦国初期の楚に仕えた呉起のものという《呉子》が書かれ,戦国末期には《韓非子》の中で〈孫・呉の書を蔵する者は家ごとにあり〉とまで言われているが,《漢書》の目録では53家790編,図43巻が著録されている。 そして,その後の歴史を経て定着したものは《武経七書》あるいは単に《七書》とよばれるもので,宋の元豊年間(1078‐85)に,武官の教育のために頒布されたのが始まりである。《孫子》《呉子》のほかに,春秋末期の斉の将軍司馬穣苴(じようしよ)の兵法を伝えるという《司馬法》,戦国時代の魏王に招かれた尉繚(うつりよう)の著書という《尉繚子》,周王朝の創業者太公望呂尚(ろしよう)の著と伝えられる《六韜》,黄石公が伝えたという《三略》の4書と,唐の李靖(りせい)が太宗のために兵を論じたものを後人が編集した《李衛公問対》を合わせたものである。…

※「武経七書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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